短編集SS

□君のキスで解く魔法 
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とある国のお城の一角で、小さな少女が目に涙をためながら手を振り上げた。


「ユリウス兄様のバカァ!!」


叫ぶと同時に降り下ろされた手は相手に触れるのではなく、空を裂いた。

普通なら触れない限り相手にダメージを与えないこの行為も、この国では意味がない。

降り下ろされた手の延長線上に現れた凝縮された光の玉が、光を放ちながら相手に向かって飛んでいく。

無我夢中で怒りに任せて爆発させた魔法。


「うわぁ!!」


驚いたような声が響き、次いで雷鳴がほとばしる。

爆発音が辺りに響き渡り、夜の静けさを妨害する。

目の前で煙を上らせている物体を見て少女はさすがにまずいと感じた。


「に……兄さま…?」


恐る恐るその物体へ手を伸ばす。
そっと優しくその物体を手に乗せると、兄が着ていた服が床に広がっているだけで兄の姿はない。


「う…嘘でしょ……どっ……どうしよう…!!」


信じられない気持ちで、自分の手のひらに乗っている物体をみる。
思わず落としたくなるそれに顔をひきつらせる。
けど落とすわけにはいかない。
兄が居たはずの場所にコイツと服だけしか無かったのだから、これが兄の可能性大。
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