短編集SS
□奏でる雅曲
1ページ/19ページ
夕暮れ丘の上で二人の小さな影。
あたりはクローバーや白詰草などで埋め尽くされ、少し見下ろせば彼らが暮らす村が見える。
そこは二人の秘密の場所。
「私ね、奏の弾く三味線すごく好き。」
白詰草で花輪を作りながら笑った幼馴染。
「でも、まだ下手だって先生が…」
自信がなさそうにうつむく少年に、少女は完成した花輪を少年の頭に置く。
「そんなことない!すごく、安心する音だよ。」
頭に置かれた冠を直しながら、少年は笑う少女に笑みを見せた。
「ずっと聞いていたいよ、奏の音色。」
そういった少女にかすかな憂いが見える。
「旭…?」
瞬きをすればそれは消えたけれど。
その憂いの意味を、僕は数日後に知ることになる。