短編集SS
□奏でる雅曲
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赤い大門をくぐると、そこは異世界へ行ったような錯覚が起こる。
にぎわう人ごみ。
赤い提灯が並ぶ。
そこは江戸吉原―――
多くの遊女が客を招く。
周りに圧倒される彼は、一歩前を歩く男に手をひかれる。
「口開けて何呆けてんだよ、お前吉原は初めてか?」
「ああ、…ちょっと驚いて」
そう言いながら手を引かれるがままに奥へ進む。
「ま、初めてなら圧倒されるよな。ここは」
意気揚々と進む友人を見て、彼はここの常連だと勘ずく。
「…お前、ここに通ってんの?」
「え、そりゃ男の夢でしょう。ここは。死ぬ前に1度はここに来るべきだな」
キョロキョロと色んな店の女を物色しながら進む彼を見ながら、自分もあたりを見回す。
「お前も一緒だろ。」
「お前と一緒にするな。」
友の発言に間髪いれずに返事をする。
「嘘をつくな嘘を!ま、ここにいる女たちはみーんな嘘つき。ってことだけ覚えとけよ!」
バシッと肩をたたかれ、友人、庄吉は"玉時雨"と描かれた店に入って行った。