□『普段笑顔の人が無表情になる時ほど怖いものはない』2
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この世界に必要なのは
強者のみ。










『普段笑顔の人が無表情になる時ほど怖いものはない』2










【神威side】



強い奴に会うと、血が猛る。
夜兎の血が、騒ぐ。
最近はそんな刺激が無くなってしまった。
きっとこの喉の渇きは、その刺激がないと無くならない。
だから夜兎族最強と呼ばれる鳳仙に会いに行った。
そう言われる彼奴ならきっとこの渇きを満たしてくれる、と。

だが彼奴はただのオジサンに成り果てていた。

口では突き放したように言って、
本当は一人の女にのめり込んだただのオジサンになってしまっていた。

俺は、酷く失望した。

そんな奴が最強??
笑わせるな。

夜兎族なら夜兎族らしく、
最強の者と闘って死ぬべきだ。
俺は鳳仙に闘いを申し出た。

そんな時に現れたのが、銀色の男。

ゾクゾクした。
侍、というらしい。
真っ直ぐな剣のような魂を持った、
地球には居なくなったはずのソレに俺は酷く興奮した。


あぁコイツなら…


だけど今のままじゃきっと一分も経たない内に殺せてしまう。
鳳仙に勝てた(色んな助けがあったけどね)、と言っても、
俺は鳳仙よりも強い。
どんなに大勢に囲まれても、
俺は殺せるよ。

だから彼に時間を与えた。
きっとこれからも彼は強くなる。
それまで待ってあげる、と。



そして、迎えにきた。



強くなっていたらすぐに戦いを申し出よう。あぁ、でも彼には弱い妹を育ててくれた借りもあるし、不本意だけど兄としてそのお礼をしなくちゃならない。

最初の一分だけハンデをあげようか。

そう考えるだけで俺の中の夜兎の血が騒ぐ。楽しみだよ、本当に。

そして江戸をさ迷っていたんだ。
そういえばあのお侍さんの家って何処だっけな。


夜なのに酷く明るい道を外れて、
路地裏を歩いていれば、消え入りそうなか細い声が聞こえた。
興味は特になかったけど、
準備運動には丁度いいかなと屋根の上から路地裏を覗き込んだ。





“…あれは……”





それは喧嘩ではなく、
立派な強姦だった。
しかも野郎が野郎を犯す、という非常に不愉快極まりないもの。





“飢えてるなぁ…”





夜兎ではその行為は子孫を残す為に行われるものであり、地球人のように愛の確認だの、快感を得る為だの、そういう甘い事は絶対にしない。
快感とは人を殺める時だけに満たされ、
また、興奮とは強者に出会った時に沸き上がるものであり、女等を見てもそんな感情が起きることはない。(もしかしたら自分だけなのかもしれないが)

しばらく観察しているとふと気付いた。
あまり思い出せないが、それはあの銀色の侍の仲間の…



“あー…えーっと…あ、眼鏡”



眼鏡くんだった。
あの時は興味の欠片すら沸かなかったが、
今こうしてじっくり見ると男にしては可愛らしさがある顔をしている気がする。
それに…啼く声が妙にゾクゾクさせる。



“綺麗だなぁ…”



火照った表情。
喘がされているのに綺麗に輝いている。
確かこういうのが妖艶、というんだっけな。
そして、あり得ない事に俺は自分のモノが微かに反応しているのを感じた。



“これが性欲か…”



気まぐれに見たが、
珍しく俺の中の何かが熱くなった気がして、俺は無意識に路地裏へ降り立った。





「?!なんだテメェは!!」



「…君達のような低俗な奴が触れていいモンじゃないよ」



「あ??何言」





ブシュッ!!










一瞬の出来事だった。
一々煩いから3人同時に殺した。
やはり脆いな。
手に血肉が付着しているが気にせずにバラバラになった死体を踏みつけながら、
疲労からなのか、惨劇に驚いたのか、へたり込んでいる眼鏡くんに俺はゆっくり近付いた。





「っひ…や…!!」



「俺のこと覚えてる??」



「やだっ…いやだいやだいやだ!!!!」





俺は眼鏡くんの精液と汗と涙でぐちゃぐちゃになってる顔を外套で拭うが、それでも震えは止まらなかった。
あぁ…眼鏡くんって呼んでるけど、眼鏡はあの男達が殺られた時の反動で落ちてしまったみたいだ。
拾ってやろうかと思ったが、レンズは割られてるし、汚れてしまっているのでやめておいた。





「大丈夫だよ。君の為に彼奴らは殺してあげたんだ。
怯えなくていいよ」





震える眼鏡くんの顎を少し持ち上げて、
軽く触れるだけの口付けをした。



“へぇ…柔らかいんだ…男なのに”



経験は何度かあるが、(子孫を残してやろうかと思って何度か女と繋がったが、ヤり殺してしまったけど)酷く柔いと思った。
あぁ…だからあの男達はあんなにもがっついていたのか。





「安心して眠りなよ…」



「………あ…」





頭をソロリと撫でてやれば、眼鏡くんの体から力が抜け、俺の胸に倒れてきた。
数回頭を撫でてから、その体を担ぎ上げ、
路地裏から抜け出した。



起きたら銀色の侍の場所を教えてもらって…
反抗したら殺して…
あ、でも勿体ないか。
しばらく様子を見てあげようか。



起きたらどんな反応するか…
少しだけ楽しみにしていよう。





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