文
□『ほとんどの人は心に鬼を飼っている』
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貴女がいないだけで、
俺はこんなにも脆くなってしまった。
『ほとんどの人は心に鬼を飼っている』
【土方side】
ミツバが死んだ。
武州の時から馴染みがある近藤さんや隊員達は涙を流した。
…いや俺は泣いてないから。
あれは激辛せんべいのせいだから。
だが世話してくれた奴が死んだことは素直に悲しく思えた。
俺みてェな奴を好いて、でも俺はアイツの気持ちに応えることは出来なかった。
いつ死ぬかも分からない身で、はたして俺はアイツを護れるのか??
…否、護れやしない。
だから手放した。
俺を忘れろと。
…そのせいで俺は総悟に恨まれてるがな。
アイツが死んでから、
総悟は何処か遠くを見つめるようになった。気持ち悪ィぐれぇに仕事をこなし、俺にもちょっかいを出すことはほとんどなくなった。(ただ一回一回のちょっかいに殺意が混じるようになったが…)
…姉貴が死んで思いを馳せているのか、
それとも……
“鬼が目覚めたのか…”
普段は隠してるみてェだが、
アイツは狂暴な鬼を隠している。
あの近藤さんでも見たことがねェ。
鬼は心を蝕んでしまう。
俺みてェに普段も鬼のような面してる奴ァ、鬼を飼い慣らしているんだが、
総悟はまだそれが出来ない。
もし、その鬼が暴走でもすると……
“いや、まさかな……”
一抹の不安を覚えながら、
俺はアイツを見張る。
近藤さんも最近のアイツに不安を覚えてるみてェだしな。
だから俺に監視を命じた。
『ミツバ殿が亡くなってから、総悟がおかしいんだトシ』
『アイツは剣の腕は確かだけどな、
根はまだ子どもだ。
お前が見てやってくれ』
…アンタは親父か。
まぁ命じられたなら仕方がない。
まだ何処か心此処にあらずな総悟を連れて
巡回へ向かう。
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