□『ドSでもどうにもならない時はある』
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お前さんを見ると、
胸が締め付けられるんでさァ




これはどういうことでィ??










『ドSでもどうにもならない時はある』










町を歩けば、時々見掛ける姿がある。

それは何かと縁があってよくつるむ連中の一人。

見掛ける度に見るからに重そうな買い物袋を持ってんでいつも手伝おうか迷っちまって、
考えるうちにソイツはいなくなる。


別に手伝いなんてする必要なんてねェ。

必要なんかねェのに、ソイツを見掛けちまったら迷っちまう。


こんなのァ、俺らしく無ェ。



もしそれがあの怪力女だとしたら、
俺はそんな風に迷うのかねェ…





“ありえねェ”





そんなつまらねェ事を考えてたら目が一気に覚めた。
せっかくいいサボりスポット(公園のベンチ)を見つけたってェのに、くだらない思考で時間があっという間に過ぎさっちまった。


ベンチから上半身を起こし、立ち上がって両腕を天に伸ばして伸びをした。
日が暮れそうな為にさっきまでいたはずのガキんちょ達はいなくなっていて、
公園は静かに夜を待っていた。





“帰るかねェ…”





歩を進み始めたとき、偶然にも今の今まで考えていたソイツが公園を通りかかった。

もちろんいつものように重そうな買い物袋を持って…





“あー…どうしやすかね…”





悩みながらポリポリと首の後ろを掻いていれば、ソイツは俺に気づいた。





「あ、沖田さん」





俺の存在に気付いたソイツは、挨拶だけ済まして帰りゃあいいのに、俺の元へ小走りで近付いてきた。


…なんでィ…
妙に胸がドキドキしやがる…


俺は平静を装って両手をズボンのポケットに突っ込む。





「これはこれは。誰かと思えば万事屋の眼鏡担当の志村じゃねェかィ」



「眼鏡担当?!何そのポジション?!」



「眼鏡以外に何があるんでィ??」



「失礼ですねアンタ!!」





志村はキッと睨んできたが全く恐かねェ。
俺は目線を志村が持っている買い物袋に向けた。





「買い物帰りですかィ??」



「え、えぇまぁ…。いつも僕が家事を担当してるんで、自然と僕が買い物をするハメになるんですよ」



「大変ですねィ…」



「慣れてますよ。沖田さんは…またサボりですか…」



「俺の仕事でさァ!!」



「堂々とサボり宣言をするなァァァア!!!!」




鋭い突っ込みで俺は口許を緩ませる。
しばらく世間話をチラホラ話していると、既に日が暮れていた。





「そろそろ帰んなくちゃ…」



「手伝いやしょうか??」





今まで言いたかった言葉を言えば、
志村は困ったような表情をした。





「別にいいですよ。慣れっ子ですし」



「いんや、こういう好意はありがたく受け取っとくべきなんでィ」





俺は無理矢理買い物袋を奪うと、先に公園を出た。
その後を必死に追ってくる志村に少し優越感を覚えながら、追い付ける程度の速度に緩めてやる。





「ま、待ってくださいよっ」



「そうやって必死に追ってくんのがS心を擽るんでさァ」



「どんだけドSなんだよアンタ!!」





普段は滅多なことじゃねぇと笑ったりしねェ。
俺の笑った顔なんて同じ真選組の仲間でさえあまり見たことねェはずで、

でも志村の前だと普通に笑っちまえる。





“これはどういうことでィ…??”





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