□『加齢臭は首の後ろから臭う』
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昔から人に抱きつかれることに慣れてなくて、
姉上には昔から時々抱き締められることはあったから慣れていたけど、
それ以外の人に抱き締められたり、抱き締めたりすることはなかった。

まぁ男だからいつかは女の人を抱き締めてみたい願望はあるけども、

こんな風に誰かに抱き締められるなんて思ってもみなかった。




…それも男なんかに。










『加齢臭は首の後ろから臭う』










朝7時には万事屋に出勤して、
二人のために朝御飯を用意して、
晴れてれば二人の布団を干して、
部屋の掃除と洗濯物を干して、
手が空いたら二人の衣類の綻びを修繕したりして、

まるで家庭に入ってる奥様みたいな日常を過ごしてる。

最初の頃は仕事もないしこんな家事全般しなきゃならないことに反発心を抱いてたけど、
今はそんな気持ちも薄れて、
未だに仕事もあまりなくて、家事全般も毎日やっているけど、
まぁいいかななんて思ってしまってたりする。

慣れってすごいな、なんて。


だけど…





「…銀さん邪魔。服が縫いにくいんですけど」



「邪魔とか言うなよ〜」



「針目に刺しますよ」



「う〜ん…でも譲れねぇわコレ」





僕が銀さんの着流しを修繕してる時に、
いつもはソファーでジャンプを読んでる銀さんが僕を後ろから抱き締めてきた。
しかも首に両腕を回してる為に、縫い目が見えない。


こんな時に限って神楽ちゃんが定春と一緒に散歩に出掛けていないなんて…





「ねぇ銀さんってば…」



「ん、あとちょっと…」





このやり取りがもうかれこれ30分は続いてる。
さすがに堪忍袋の緒がキレそうな為、針を銀さんの手に刺してやろうとしたら、

僕の耳許で囁くように銀さんは言った。





「俺の甘ェ匂いが染み付いてんぜ…」



「っっっ…!!!!!!」





とりあえず銀さんの手におもいっきり針を刺してやれば、今まで何言っても離れなかった腕が離れ、ギャーギャーと騒いでいた。


ざまーみろと鼻を鳴らしたけど、
顔の熱はどうも下がりそうにはない。





「銀さん、加齢臭臭い」



「え、マジでか?!」



「嘘です」





本当は銀さんから漂う甘い匂いが好きで、
銀さんに抱き締められるのも結構好きだなんて、



死んでも言ってやらないんだ。





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