百合SS
□一つになれるくらい近くに
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二人で一つの毛布に包まれて、私たちは静寂の中ただ存在している。
「ムギ、もっとこっち来て?」
りっちゃんが甘えた声を出すとき。
それは不安なとき。
「うん……」
それが解るようになったから、私は言われるがまま寄り添う。
りっちゃんの不安も、私に包み込めたらいいのに。
完全には、できないから。
だからせめて、身体だけでも。
「ムギ……」
「なあに?」
見上げてくるりっちゃんの表情は、いつもの愛嬌あるものではなく、たまに見せる凛々しいものでもなかった。
頼りなく浮かぶシャボン玉のような。
加減を間違えたらすぐにでも消えてしまいそうな位、弱々しい。
「離さないで、くれよ……?」
「……うん」
震える声も身体も。
抱きしめるだけじゃ救えない。
解っていても、今はこれしかできないから。
私はりっちゃんを抱く腕に、力を込めた。
――いつか終わりがくるのは、解ってる。
それが避けられないことも。
だからせめて、永遠を夢見させて。
END