百合SS

□ふたりでいっしょに
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その日はクラス委員の会議がありました。

もうすぐ体育祭が行われることもあって、会議は長引いてしまい、教室の窓から外を見れば、太陽さんはすでにお休み。

空はすっかり暗くなっています。

外灯や建ち並ぶ家々の灯りのおかげで真っ暗とまではいきませんが、やはり夜道の一人歩きは……ちょっぴり怖いです。

去年は同じくクラス委員だったかがみさんと一緒に帰ることもできたのですが、今年はそうはいきません。

少し憂鬱な気分で、私は校舎をあとにしました。



「はぁ……」



自然とため息がこぼれてしまいます。

いけませんね。

幸せが逃げてしまいます。

気合いを入れ直しましょう。

せめて変質者さんやおばけさんに逢わないことを祈りつつ、私は校門をとおり抜けようとします。

すると、



「おーい、ゆきちゃーん」



突然、私を呼ぶ声が聞こえてきました。

私のことを『ゆきちゃん』と呼んでくれる人は、おそらく一人だけでしょう。

その人が何故今ここにいらっしゃるのかは、解りませんが。



「つかささん、どうして……」

「ゆきちゃんを待ってたんだよ」



驚く私に、つかささんはあっけらかんと答えます。

それこそどうして、と訊かなければなりません。



「お姉ちゃんがこの時期のクラス委員会議は遅くまでかかるって言ってたから、心配になっちゃって」



迷惑だったかな? と首を傾げるつかささん。

そんなわけがありません。

私は嬉しくて嬉しくて、思わずつかささんを抱き締めてしまいました。



「わわっ」



突然のことに驚きながらも、つかささんは私の体を支えてくれます。



「えへへ、ゆきちゃんってば甘えんぼさんだね」



つかささんはお姉さんっぽく言うと、私の頭を優しく撫でてくれました。

おそらく、かがみさん達お姉さん方に、こんなことをしてもらったことがあるんでしょう。

そう考えると、何だかお姉さんぶっているつかささんのことが可笑しくなってきて、お腹の底から笑いが込み上げてきました。



「くすくす……」

「えっ、なっ、なに? 私変なこと言った!?」



突然笑い出した私に不安を覚えたのか、つかささんは慌てて訊ねてきます。

彼女は気づいていないのでしょうが、そんなつかささんの反応が、よけいに私に笑いを誘ってしまうのです。



「も、もぉっ! ゆきちゃん!」



頬を膨らませるつかささん。

本気で怒っているわけではないことは、私を包んでくれている腕の力を弱めていないことから解ります。

私はそんなつかささんの膨らんだ頬に、唇をくっつけてキスをしました。



「ゆっ、ゆきちゃんっ!!?」



不意打ち成功のようです。

つかささんは顔を一気に赤くすると、パッと私から離れてしまいました。

つかささんの温もりは名残惜しいですけど、そろそろ離れておかないと色々とまずいですからね。



「つかささん、ありがとうございます」

「あぅ……」



キスをされた頬を抑えながら、俯くつかささん。

お礼の言葉はちゃんと聞いてくれたのでしょうか?



「……ど、どういたしまして」



どうやらしっかり耳に届いていたようです。

顔は上げてくれませんでしたが、しっかりとつかささんはそう言ってくれました。



「ではつかささん、行きましょうか」



すっ、とつかささんの手をとる私。

またまたつかささんは驚きます。

顔をあげたつかささんの目が、私の目とばっちり合いました。

さあ、今度はどんな反応を見せてくれるのでしょう。



「……うん」



頷くつかささん。

そして、



「いこっ、ゆきちゃん」



にこりと笑って、私の手を強く握り返してくれました。

相変わらずほっぺたは真っ赤です。

……それは、私も同じなんですけどね。





END
 

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