百合SS

□言葉そのままに
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部室でたまたま二人っきりになった時。

何の前触れもなく、梓が抱きついてきた。

私の腰に回された腕の力は、小柄なこいつからは想像もつかないくらい強くて。

突然のことに混乱しながらも、私はそのことを梓に訴えた。



「……梓、ちょっと痛いんだけど」

「痛いんですか?」



表情は解らないけど声音はいつもと同じだった。

ただ、それ故に梓の考えが読めないのだけど。



「うん、だから少し力抜いてくれると嬉しいかなー?」

「……」



今度は無言か。



「梓ー? 聞いてるー?」

「聞いてますよ」

「聞いてるんならさ……」

「律先輩」



思わず言葉を止めてしまうほど、私の名前を呼ぶ梓の声には力がこもっていた。

……ような気がした。



「……、なに?」

「私をいっぱい感じてくださいね?」



ドキ、と胸が高鳴った。

何故かは、解らないけど。



「……」

「これが私の気持ちですから」

「……お手柔らかに」



それが、私の精一杯の返事だった。





――痛いくらいの愛を

  与えたい。

  感じてほしい。





END
 

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