『海と狐』
□**大人になる方法**
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「だから!子ども扱いするなってばよ!イルカ先生のそーゆー所俺ってば好きくない。」
強い口調で言い放ち、イルカの手をパン!と跳ね除ける。
…とっさの出来事に、イルカは驚いた表情のまま固まってしまっていた。
「あ…。ごめんてば…。イルカ先生。」
謝りながら、ナルトは俯いてしまった。
イルカ先生はなんにも悪くないのに、感情のままに八つ当たりなんかして、これじゃサクラちゃんに子供って言われても仕方が無いよな…。俺ってば最低…。
「どうしたんだ?らしくないじゃないか。」
イルカは、優しい口調でナルトに問いかけた。
「うん。ごめんなさいってば…。」
言いながらイルカに背を向ける。気まずくて、ナルトは顔を上げることが出来ないでいた。
「さっきの事は気にしてないよ。でも、ナルトの元気が無いことの方が気になるな。」
クスッと笑いながら、ソファの上で小さく丸くなっている背中を優しく包み込んだ。
「イルカ先生。重いってば…。」
「ん?重いか。じゃ、今日何があったか話してくれたらどいてやるよ。」
言いながら、グイグイと体重をさらにかけてくる。
「分かったってば!話すから。重い。どいて!」
「そっかそっか、話す気になったか。どれ、イルカ先生が聞いてやろうではないか。」
ナルトから体を離し、腕組しながらウンウンと偉そうに頷いている。
イルカ先生のこーゆー所は、自分に負けないくらい子供だってば…。
ナルトは聞こえない程度の声でボソッと呟いた。
でも、ふざけているイルカを見てさっきまで沈んでいたナルトの気持ちが、フッと軽くなった気がした。
こうして自分が話しやすい雰囲気を作ってくれている。そんな心づかいがうれしかった。
「今日任務中にさ、子供だ。ってサクラちゃんに言われたってば。俺ってば、最近よく言われるんだ…。だからさ、そんなに子供なのかって考えてたんだ。」
ナルトはポソポソとゆっくり今日ずっと気にしていた事を話し始めた。
「サクラにそんな事言われたから、今日は何だか様子がおかしかったのか。」
「納得。」と、イルカは頷いている。そして、いつまでも自分に背を向けているナルトの向きを変え。ニッコリといつもの優しい笑顔を向けた。
「ナルトは、早く大人になりたいのか?」
「そりゃ、早く強くなって大切なもの守るんだから。いつまでも守られている子供でなんかいたくないってば。」
「それは、大人にならないと出来ないこと?今だって、十分出来ていることじゃないか?」
「出来てる?」
イルカの言っていることがよく分からなくて、ナルトは首をかしげる。
「そう、もうすでにナルトは大切な人を守れてるって事だよ。」
「そうなの?」
うん。と頷きながら、まだよく分かっていないナルトの柔らかな髪を撫でながら、イルカは話を続ける。
「大切な人のために何かしたいと思うことは、相手にとっては嬉しい事じゃないか?守るって事とは少し違うかもしれないけど、大切に想ってくれているって感じるだけで、一人じゃないって思えるだけで、その人は強くなれるんだよ。」
「うん…。それはなんとなく分かる気がするってば…。」
まだ納得できない。とゆう顔をしているナルトに、「それでいいんだよ。」と優しく笑いかけながら話を続ける。
「大丈夫。ナルトは守られてるばっかりの子供じゃないよ。焦らなくてもいいんだよ。少しずつ大人になっていけばいいんだからさ。」
考え込んでいるナルトを見つめながらイルカは言った。
「…。なんでかな?さっきまで凄く子供だって言われるの気にしていたはずなのに、イルカ先生に大丈夫って言われたら気にならなくなっちゃった。」
ニシシと笑いながらギュッとイルカに抱きついた。
「俺ってば、今日帰って来た時にイルカ先生に抱きつきたかったの我慢してたんだ。でももう、我慢するのやめにする。」
胸いっぱいにイルカの匂いを吸い込んで、照れくさそうに笑った。