『海と狐』

□**時間**
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ベットに寝転びながら見慣れた天井を見つめる。
考える事はただ一つ。

離れていた時間は、時に大きな溝を作ってしまうものなのか。きっと、ナルトも不安だっただろう…。
あの子は今日、どんな気持ちで自分を訪ねてきてくれたのだろう?
一番に自分の所に来てくれたのではないのか?
そんなあの子の気持ちを考えもせず、俺は自分の事ばかり考えて…。

 「情けない…。」

溜め息をつきながら夜空を見上げる。
暫く考えて、ベットから起き上がった。
こんなに夜遅くちゃもう寝てるかもしれない。
でも、今行かないと自分はきっと後悔する。
さっきはナルトが俺に会いに来てくれた、今度は自分が素直になる番だ。
そう思いながら、机の上に置いてある包みを手にして俺は玄関を飛び出した。


コンコン。
ナルトの部屋の扉をノックする。
もしかしたら、もう眠ってしまっているのかも。
コンコン。
暫くして、部屋の奥からこちらに向かってくる気配を感じた。

そっとドアが開かれる。

 「ナルト、遅くにごめんな。急に顔見たくなってさ…。お前に、渡したいものもあるし…。」

部屋の主の機嫌を伺いながら、ニコッと笑顔を作ってみる。

 「何?イルカ先生。俺ってばもう寝てたんだけど。」

少し厳しい口調で返される。
どうやら機嫌はよろしくないらしい…。

 「そっか、そりゃ悪かったな…。でも、これだけは渡しときたくってな…。」

そう言って、俺は家から持ってきた包みを渡す。

 「先生、これってば何?」

不思議そうな顔をしてナルトがたずねてくる。

 「あけてごらん。まぁ、たいした物じゃないけど…。」

照れくさくて、ポリポリと鼻の傷を掻く。

ナルトは嬉しそうに笑い、「ありがとう。」と言ってくれた。
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