『日記にてSS』
□モワモヤ
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最近テンゾウが素っ気ない・・・。
話し掛けても、「ハイ」と「そうですね。」位しか返ってこないし。
ナルトの修行に付き合って疲れているのは分かるけど、こんなに素っ気なくしなくてもいいじゃないか。
今日も朝から修行に付き合う予定で、俺とテンゾウは早朝から修行場でナルトの到着を待つ。
集合時間は等に過ぎているのに、ナルトが現れる気配がない。
「ったく、あいつは俺達を待たせて何やってんのかねぇ。」
大袈裟にため息をついて、隣に座ってるテンゾウに同意を求めた。
「まぁ、ナルトも連日の修行で疲れてるんですよ。」
「仕方ないじゃないですか。」と言いながら、テンゾウは苦笑する。
『あれ?お前そこでナルトのこと庇っちゃうのね・・・。』
些細な事なのに、何故だか今日はそんなテンゾウが気に入らない。
最近、俺に対して冷たいし。
「それを言ったら、俺達だってあいつの修行に毎日付き合ってるでしょ?」
何時もなら「そうだねぇ。」なんて同意してる所なのだが、今日はそれすらも出来ず半ば無理矢理に反論する。
『あぁ、俺って心が狭い奴・・・。』
「先輩・・・、僕等とナルトを比べちゃ駄目でしょ。実際あの子、よくやってると思いますよ。ホントに。」
テンゾウはそう言いながら、修行の日々を思い出しているのかうっすらと微笑んだ。
日々成長していく部下の姿がうれしいのだろう・・・。
俺だって、あいつが成長していく姿を見るのは好きだ。
でも、それを思い出して嬉しそうに微笑むテンゾウを見るのは面白くない。
「ふ〜ん。テンゾウ、今日はやけにナルトの肩を持つじゃない?もしかして、ナルトに惚れたとか?」
「最近のあいつカッコイイもんねぇ。」とからかうように言葉を続けると、それを聞いたテンゾウが顔を真っ赤にして全身で否定してくる。
「そんなっ!・・・ち、違いますよ!僕はただ、一般的意見を言ったまでで・・・。」
顔の前で両手をバタバタ降りながら、必死に話している様が見ていて面白い。
「大体、僕がナルトに惚れるとかありませんから!・・・そんな事を言ってる先輩こそどうなんですか?いつも、ナルトを可愛がってるじゃないですか。」
話の矛先が、自分へと向けられた。
「はっ?俺?」
理解出来ず、間の抜けた返答を返す俺に、テンゾウはさっきよりも幾分か真剣な眼差しでこちらを見つめ返し、再度質問を口にした。
「・・・ですから、先輩こそナルトの事どう思ってるんですか?」
視線を逸らしながら、俯き加減で話す。
「・・・えーっと。」
突然の質問に言葉が見つからない。
「あいつの事なんて、何とも思ってないよ?」
「どうして疑問形なんですか!」
「あぁ・・・すまん。」
テンゾウはどうやら結構真剣に聞いてたらしい・・・。
「もういいですよ。・・・どうせあなたは真剣に答えてなんかくれないんだ。」
「こっちの気もしらないで。」と呟き、ため息を吐く。
あぁ、どうやらホントに機嫌をそこねてしまったらしい。
長い手足を器用に畳み、テンゾウは小さく座っている。
そんな仕種一つが、俺の悪戯心に火を付けるって事をコイツは知らないんだろうなぁ。
クスッと笑いながら、テンゾウの側へ腰を降ろす。
肩に腕を回し、グッと自分の方に引き寄せると、テンゾウの耳元でボソリと一言囁いた。
耳から離れる瞬間、耳たぶをカリッと甘く噛んだ。
みるみる赤くなっていくテンゾウの顔が可笑しくて、思わず声を出して笑ってしまう。
「・・・信じてもいいんですね。」
耳を押さえながら再確認をしてくる姿が、本当にテンゾウらしくてまた笑いが込み上げる。
「あぁ、ホントだよ。」
ニコリと笑って答える。
「なんだか、今日の先輩は意地悪ですね・・・。」
気持ちが少し落ち着いたようで、テンゾウはそう俺に言ってきた。
「ん?そう思う?」
「・・・はい。」
「だったら今度から、俺に冷たい態度とらないでよね。」
「でないとまた虐めるよ?」と一言付け足してテンゾウに伝えた。
「?」
わけが分からないと首を傾げるテンゾウを見て、『やっぱり悪戯したくなるんだよなぁ。』なんて、改めて思う俺だった。
−END−