wars ss

□毒炎
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「Get up. 佐助。」



不覚だった、まさか寝こけてしまうなんて。
何があるかわからない状況で、どうして、なんで。

ゆらゆらと揺れる頭を何とか立ち直らせて、政宗の表情を窺う。



「悪い、薬を盛らせてもらった。」

「…え、」

「真田幸村から気持ち悪い文が届いてたんでな。」



読んでみろ、と放られた紙を拾い上げて目を通す。

そこに書き上げられていたのは、当然、嘘ばかり。
なにがいつも佐助がお世話になっております、だ。
なにが大した物でもありませんがお礼を兼ねて贈り物を、だ。
なにが夜伽の際のお供にでも、だ。



「デタラメばっか。」

「あの趣味の悪い蝋燭はもちろん砕いて調べた、毒だ、毒。」



最初から、俺もまとめて消すつもりだった、ってことか。
いい知らせを待ってるっていうのも嘘か。
俺は、人ひとりを殺す為の捨て駒か。

自嘲がたらたらと零れてしまう。

理由は十分過ぎる。
あとはもう、決まっている。
俺には守りたい人がいる。

俺の為に、俺は俺とアンタを殺す。



「ねぇ、政宗。」

「…なんだ。」

「俺と一緒に、真田幸村殺してくれる?」



Ofcourse. と返事があるまでの三秒間。
なんか今までことを精一杯噛み締めて、俺は修羅になる。

アンタが自由自在に動かしていた忍は、もういない。










「今宵は雲一つ無い上弦の月だ、上月、ってのはどうだ。」

「政宗がくれる名前なら、俺はなんでもいいよ。」



さよなら。
アナタの知っている俺はアナタの望み通り。
毒炎で死にました。



END.


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