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□六十六億個の端と端
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生まれ変わったら二人じゃなくて一つがいい。
なんて、
小学生レベルの愛を君と約束したくなる。
それくらい、ただ純粋に好き。
その純粋さに比例して、深くもなければ重くもない。

それが丁度いいだけ。
全部言葉の綾でも済むような、罪じゃない愛。





昨日降った雨で、貯水タンクの床は綺麗だった。



「6限目、出る?」

「出たくない。」



コトは済んで、暫くぼーっとして。
ネクタイを結ぼうとしない政宗はいつもそうだ。

鎖骨の下に付けたキスマークを浴室の鏡で見た時、君がどう思うかなんて俺にはわからない。

俺の背中に爪を立てたり、
もっとと乞う艶やかな表情だったり、
ヤってる時に君が"気持ちいい"以外に考えてることなんて俺にはわからない。

別に、知りたいわけじゃない。



(これでいいとも、思ってないけど。)



君が死んだらどうしよう、とか、たまに想像してみる。

たぶん俺は泣く。
好きな人が死んだら、泣く。
たとえ一番じゃなくても。

でも、俺が死んだとして、

たぶん君は泣かない。
好きな人が死んでも、泣かない。
それより暗い悲しみを、君は知ってる。



「伊達ちゃんって、俺が死んでも泣かないでしょ?」

「ああ、泣かない。」



ほら、やっぱり。
空を見つめたまま、心此処に在らずって顔で言う。



レモン600個食べて俺が死んだとして、
タバコの吸い過ぎて君が死んだとして、
塩舐め過ぎて俺が死んだとして、
コーヒー飲み過ぎて君が死んだとして、

俺は泣く。
けど、君は泣かない。

君は俺を強いというけど、それは嘘だ。
泣かないことより強い証明を俺は知らない。



生まれ変わったら二人じゃなくて一つがいい。
そしたら、"泣く"と"泣かない"の間になるよ。

"目に涙を溜める"っていう、弱くもないし強くもない人になる。

生まれ変わったら君と一つがいい。
君がいい。



「またくだらないこと考えてんだろ。」

「うん、考えてる。」



君はたいそう俺の心を探るのが得意だ。
どうしてかは、知らない。

別に、知りたいとは思わない。



君と一つになって生まれたら、こんなこと考えなくなるよね。
他の感情はともかく、"寂しい"だけは忘れられるから。

それってすごいことなんだよ。
神様の次にすごいことだと俺は思うんだよ。
人間って悲しいとか苦しいとかより、"寂しい"のと戦ってるから。
だから、君がいい。



「…俺は、」

「うん、」

「生まれ変わったら、アンタを一番好きになりたい。」



(それは、知りたくなかった。)



ああ、泣きたい。
今度は俺の目をちゃんと見て、冗談ではないって顔で言う。





生まれ変わったら二人じゃなくて一つがいい俺。
生まれ変わっても一つじゃなくて二人がいい君。

小学生レベルの愛に相違点。
でも最終的結論は、次は貴方がいいということ。

神様、どうか。
もしも願いが叶うなら。
六十六億個ある運命というやつの、俺と君の端と端を。
来世でくっつけてはくれませんか?

子宮の中でも、始めての呼吸の後でも、どっちでもいいから。



黙って抱きしめられたのは、それから三秒後の話。



END.


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