wars ss

□毒炎
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「佐助、頼んだぞ。」



どうして忍なんかになったんだろう、俺。
なんでこんな殿様に仕えちゃったんだろう、俺。
もう一回言ってみろ。
旦那だろうと容赦しない、殺してやる。



「…反抗的な眼だな。」



クス、と歪む口許に、どうしようもない憎しみが込み上げる。
アンタはいいよね、その唇で言葉を紡ぐだけだ。

最初から、こうするつもりだったんだろ?

どうして恋なんかしたんだろう、俺。
なんであの人のこと愛しちゃったんだろう、俺。
こんな宿命なら、こんな感情抱かなかった。

心なんか、いらなかった。



「アンタなんか、キライだ。」

「嫌いで結構。佐助、おまえの代わりなどいくらでもいるのだぞ。」



遠回しに言わなくたっていいよ、わかってるよ。
殺れってことなんだろ?
殺れないなら、死ねってことなんだろ?

所詮、忍は人に非ず。
ただの道具に過ぎない。

使い捨てなのは重々承知、それが俺になったようなもんだ。
でも、どうして、



「どうして、俺なの。」

「決まっているではないか。」

「俺じゃなくたって、出来るじゃない。」

「…おまえは奥州の竜と閨事を繰り返しているだろう、使わない手はない。」

「なに、それ、」

「犯すついでに殺してこい、簡単なことではないか。」



十分に待ったのだぞ、なんて、最低だ。
アンタなんか地獄に堕ちろよ、今すぐに。
触るな。
喋るな。
これ以上踏み込まないでくれ。



「佐助、」



死ねよ。
死んでくれ。
アンタが俺の主だとしても、許せない。
俺の苦しみを引き換えにアンタが笑うなんて、認めない。

消えろよ。



「いい知らせを、待っているぞ。」



殺すだけじゃ飽き足らない。
もっと、もっと、もっと惨い復讐じゃなけりゃ。
屈辱の顔が見たい。
俺に軽蔑の眼差しを向ければいい。

謀反だ。
あの人が無事なら、俺はどうなったっていいから。










三日後、平然と振舞える自身を俺は恐ろしく思う。



「―…Candle?」

「そ、綺麗な色でしょ?」



空色をした蝋燭を政宗に見せれば、興味にひとつめが大きく開かれる。

これがあの下衆から渡された物であれば、まぁ、検討はつく。
火を灯した瞬間ドッカンとか、蝋が溶けて毒が撒かれたりとか。

伊達殿に贈り物だ、なんて、綺麗事にも無理があるだろう。
ほんと、笑わせるよね。



「でも、火は点けないで。」

「…?」

「絶対、ね?」

「…わかった。」



何処か腑に落ちないといった顔の政宗に申し訳なく思いつつ。
お茶でも飲もうと誘ったのが、結末への分かれ目になるとは。












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