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□ジンに絞るライムのような関係 シュロ
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「まーさむねー、めしー。」
「もとちかテメー、起きてくっときはスウェットかジャージはけっつってんだろ。」
元親が起きてくると、10回に9回はこの会話を聞く。
元親は学習能力がない。バカだ。だから何度言ってもTシャツとボクサーパンツのまんまで二階から下りてくる。
しかも今日の場合はYシャツのせいで余計に不格好だ。情けなさ過ぎる。
オヤジはバカだって馬鹿にすると、バーカこれでいいんだよって馬鹿にされる。何がいいのかさっぱりだ。
政宗さんも飽きもせずに元親の頭をはたく。変な人だなぁって思う。
もうコレが朝の挨拶みたいなもんなのかな、夫婦がキスするみたいな。
「のぶちかー、もとはるー、おはよーさーん。」
「…コーヒー淹れてくる。」
元親が俺の隣に腰掛けると、政宗さんは元親のぶんのコーヒーを取りにキッチンへと席を立った。
頭をわしわしとやりながら、左目を覆うズレた眼帯を直してる。っていうか顔洗ってこいよ。
元春はそんなオヤジを一見すると、呆れたようにまばたきを一つしてからホットサンドを齧った。
「そーゆーとこがホント似てんなぁ、元春は。」
「え、オヤジって元就さんに呆れられてんの!?」
「呆れるポイントは全く一緒だと思うよ。」
「Therefore he is not similar. 根本的なところはともかく、毛利より性悪だ。」
俺や政宗さんのマグカップより一回り大きいマグカップになみなみとコーヒーを注いで戻ってきた政宗さんは、コーヒーフレッシュ一つとスティックシュガーを一本一緒に元親に渡してイスに座った。
元親の朝のコーヒーはいつもブラックだ。
でも政宗さんは元親が疲れてるってよくわかってるから無言でミルクと砂糖を添える、それを元親も無言で受け取る。
コレって、友達同士じゃ普通出来ないことだと思う。俺は。
「今ホットサンド焼いてる。」
「わりーな、ありがとよ。」
元親は茶色になったコーヒーを一口飲んでからタバコに火をつけた。
すっと息を吸って、盛大に吐く。やっぱり似てる、仕種が。政宗さんと似てる。
そんな元親を凝視してる俺に気が付いた政宗さんは、喉をクツクツと鳴らして笑った。
それから元春も鼻で笑うもんだから、なんだかやるせない気持ちになって眉間に皺が寄ってしまう。
「な、なにっ!」
「おまえ、さっきからずっと百面相してて楽しいか?」
「のぶちか幼稚園児みたい。」
「ひゃっひゃっひゃ、のぶくん幼稚園児だってヨ!」
「オヤジいいいぃぃぃ!!!」