□三日月の夜
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「んん‥っ、ふ」

私の両手は頭の上で、政宗様の左手で抑えられた。

布団の上に乱暴に押し倒されているから、手が使えず、肌に着けてる服も淫らになる。

「何故わしを受け入れる‥」

今日は三日月だった。
三日月の夜、政宗様は必ず私に会いに来る。

「わしがお主から離れられないのを知っての事か」

妖艶に政宗様の唇を映す月明かりが私の胸も露わにさせる。

余った右手が全てを剥ぎ取った。

抵抗はしない。

「‥何故嫌がらんのだ。もっとわしを嫌え」

貴方は私を睨む。
私は貴方を見つめる。

「政宗様、あの日からわたくしめは貴方様にずっと感謝しております」

あの日から‥

目覚めたら私はベッドに居なかった。
一つの大きな部屋の畳みの上に敷いてあった布団に寝ていた。
フローリングではない柔らかい畳みを踏み締めたら貴方がいた。
私は500年以上の時を戻り、この世界に来た。
帰れるかも分からない。
何も知らない私を貴方は丁寧に包んでくれた。
「この部屋から出るな。寂しくなったらわしが来る」そう言って貴方は私を監禁する。
それが1番いい。この戦国時代で長く生きる為なら、貴方の言う事を‥

政宗様は私を守ってくれている。
誰よりも愛してくれている。

「やはり、何をされても嫌いにはなれません」

そして、私も愛してしまった。

「馬鹿め‥わしが嫌いになれと言うておるだろう」

貴方は恐れた。
自分が居ない世界になった時の、私を。

「このまま事を続けて頂いて構いません‥幸せ、で御座います。」

風の音が止まない。
ざわざわと木々が揺れる。

「馬鹿め‥馬鹿者めが!!」

失くなった右の瞼から涙が溢れた。

「三日月の夜、政宗様が此処を訪れなくなったら、わたくしは風になり政宗様に会いに行きます」

政宗様が私から離れて背を向けた。
ドカッと座ると小さく丸まったものだから‥

自由になった両手で貴方を包む。

「政宗様、愛は消えぬのです‥いつの時代も‥」

今日の三日月はとても小さく赤かった。
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