戦場で彼は歌う

□第1夜 ハジマリの出逢い
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◆   ◆   ◆



 少年の居たところは、彼以外にいなかった。

 街灯もついており、静かな夜の街と言われれば誰もが納得するだろう。

 しかし、どうにも引っ掛かりを覚える。

 少年の隣を歩いている神田は、1人思考を巡らせる。

 神田の今回の任務はイノセンスの有無を調べること。あれば回収。

 イノセンスは確かにあった。適合者もいた。

 そこの住民が次々に居なくなるという奇怪な事件の犯人はAKUMAだ。

 この綺麗な造りをした適合者と、その寄生型イノセンスを狙ってこの街にやってきたのだろう。

 引っ掛かったのはソコだ。

 この少年はどうして1人もいなくなったこの街に居続けたんだ?

 ここはすでに人の皮を被ったAKUMAの巣のようなものだった。

 聞くべきかどうか悩んでいると、少年が神田を見上げた。

 推定171cmくらいであるだろう少年が、181cmの神田を見上げるのは自然なことだ。

「聞きたいことがあるんだけど」

 澄んだ声が耳に心地よく響く。

 神田は目で促した。

「俺はイル、イル・スコット。アンタは?」

 少年ことイルは、そう言って首を傾げた。

「神田 ユウだ」

「日本人?」

 何故か、コイツの声には苛立たない。なので神田も比較的穏やかに話すことができた。

「そんなようなもんだ」

「ふーん。あのさ、幾つか質問したいんだけど」

「……面倒だから、教団に行ったらコムイに聞いてくれ」

 明らかにこちら側について知らなそうな様子なので、神田は説明するのが嫌だった。

「いや、その教団がなんなのか教えてくれてもいいでしょ」

 てか、コムイって誰? というイル。

 ……さすがに基本知識は入れておくべきか。

 神田は諦めと面倒臭さでため息を吐いた。

「教団ってのはエクソシストの総本部、黒の教団。コムイは科学班室長」

「さっきも言ってたけどエクソシストって?」

 イルが首を傾げた。ハニーブラウンの髪がそれに合わせてふわりと揺れる。

「AKUMA退治専門の聖職者だ」

「さっきから聞いてると、アンタのいう『アクマ』って、あの化け物のことみたいなんだけど」

「そう、あれは死者の魂と機械を融合した生きる悪性兵器」

 イルはよくわからなかったのか、不思議そうな顔をして、神田を見ていた。

 神田は本当に面倒になり、説明を中断し、教団に急ぐことにした。

 
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