貴方の為に咲きましょう。

□第一話
1ページ/5ページ

 

 痛い、痛いよ……。

 苦しい。

 もう、いや。

 だれかたすけて。





『おや、どうして痛いのです?』




 薄れかけた意識の中で、凛とした声が響いた。

 そのまま白い世界に吸い込まれていく。

 いつものように気を失うだけかと思ったのに、その日はいつもと少し違った。

 体の痛みは消えたけれど、意識は妙にはっきりしていて、目を開くと私は草原にいた。

『……なに、ここ』

『精神世界ですよ。それにしても、奇特な子ですね。クローム以外に私と波長の合う子がいたとは』

 藍色の髪に赤と青のオッドアイ。

 白いシャツと黒いズボンに身を包んだ端整な顔立ちをした男が、目の前に立っていた。

『だれ?』

 意識ははっきりしているのに、痛みが全くこないから、どうにも変な感じがした。

 私の問いに、青年は目を細めて笑う。

『クフフ、私は六道 骸です。あなたは?』

 ろくどう むくろ。

 楽しそうに笑う彼を私は少し不思議な気持ちで見つめる。

 こんな表情で私を見てくれる人はいなかった。

 問い掛けの意味に少し悩んだが、おそらく名前を聞かれたのだろう。

『名前はない。多分、個別名称はP060001』

『……人体実験、ですか』

 青年が不愉快そうに眉をしかめた。

 私は黙って彼を見つめる。

『だから、痛かったのですね』

 青年はそう言って、私の頬に触れた。

『ここで会えたのも何かの縁。君をその腐った世界から救ってあげます』

『たすけて、くれるの?』

 青年は、オッドアイの瞳を細めて笑った。


 それが私と骸さんの出会い。



    *   *   *



「そういうわけで、使われてくれますね、沢田 綱吉」

「どういうわけだよ……」

 クローム髑髏の口から突然飛び出た骸口調にツナは溜め息混じりで突っ込んだ。

 現在、ボンゴレ守護者会議の真っ最中である。

 話に一区切りついたと思い、群れるのが嫌いな雲雀 恭弥がそうそうに退出しようとした瞬間、響いた声。

 会議中一言も発言しなかったクロームを乗っ取った骸であった。

「仕事ですよ」

 沈黙が室内に落ちる。

「仕事!?」

 一番に声を発したのはツナであった。

 少々声が上擦ったが仕方がない。

 骸が仕事の依頼を持ち込むなんて初めてなのだから。

 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ