Tennis

□幸せイコール
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…やっぱすごいわ。


部長の綺麗な字が並べられた紙を置いてため息をつく。

毎回第一面の隅(まぁ隅っていってもやたら目立つ)に載せられている『毒草聖書』。

校内の生徒に抜群の人気を誇る小説だ。

それを執筆するのはテニス部の部長で俺の先輩で…恋人。



「それ次の号に載せる予定なんやけど2パターン考えてん。どっちがえぇと思う?」


「…どっちもそこそこえぇんとちゃいます?俺的には最後にオチがある方がえぇです。」


おもろいし。と付け足すと部長は綺麗に笑って『財前のお墨付きやから今回もヒットやな』って。


そこそこなんて嘘。
ただのミステリーなんになんでこないおもろいんやろ…



部長独特の世界、豊富なボキャブラリー、絶妙な言い回し。

そこには普段ミステリーはおろか小説さえ読まない自分まで虜にしてしまうような『おもしろい』の要素が詰まっていた。



こんなんずるいわ。
頭良くてテニスもできて容姿端麗。
その上文章力、表現力までずば抜けとるとか。



「ほら、帰んで?」


目の前にいた部長をじっと見つめていると微笑みと共に手を差し出された。


部長の手に手を重ね、温もりを確かめるようにぎゅっと握った。





…幸せ、やな





――ほらまた、俺はありきたりな表現しかできない。



豊富なボキャブラリーも、絶妙な表現の引き出しも、自分には何一つ無いのだから

当たり前といえば当たり前なのだけれど。



チラ、と隣を見上げると薄く微笑む唇が目に入った。


それを見ただけできゅんと切なくなるなんて、どうやら自分は相当重症らしい。



―この人は、、この気持ちを何て表現するんやろう






「幸せ」イコール
(きっとそれは「幸せ」よりずっと「幸せ」)
 

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