Tennis

□マフラーを
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「はよざいまーす…」


「なんや光、寒そうやな」


もう3月やで?とる言ってくる謙也さんの腹目掛けて拳を突き出す。

あっさりかわされたそれは謙也さんの左手に捕らえられて、いつの間にか絡められていた。


「あ、梅咲きそうや!!!」


そんなこと言ってはしゃぐ謙也さんはもうマフラーも手袋もしてなくて、寒さには強いと言っていたことを思い出した。


「もう春やんなぁ…桜咲くの楽しみやな♪」


謙也さんは俺に笑いかけてくるけど、俺はマフラーに顔を埋めるように俯いた。


アホちゃいますか?

春が来るいうことは、謙也さんがここを卒業して、俺の側にいなくなるってことなんですよ?


それ、わかっとるんですか?


「俺、春なんか嫌いっスわ」


梅を見つめる謙也さんを置いて一人歩き出す。


4月になったら、こうして2人で歩くこともなくなるだろうか。


そう思うと無性に泣きたくなって、マフラーに再び顔を埋めた。




マフラーをぐるぐる巻きにして
(こんな情けない顔、見られたない)

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