World-X ワールドクロス

□World-X第一幕
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第三章 死神の力を持っている子供



来火と別れた後ボクはある路地裏に入っていった。


「あそこまで脅せば流石の来火も家に帰ろうとしないよね。
まあ……最悪ボクに会おうとしなければ良いし」


校庭のダイナマイトは来火のせいだけじゃないってことは分かってたけど、
都合が良いからそれで脅させてもらった。
まあ……それでも実行犯は来火だし。
別に良いよね。


「!……虚の気配」


場所は……ここから近いね、
……用事があるけど、行くか。


「確かこの辺りだった筈……」


虚の気配を感じた場所に着いたが、
辺りを見渡しても虚の姿は見えなかった。
……もう倒されたか?
いや、気配はする……何らかの力で見えていないだけ。


「……そこ」


背後から殺気を感じてすぐに後ろに振り向きソイツを切った。


「グガァ!」

「……姿を隠すのは上手いですけど、
どうせだったら殺気もちゃんと隠した方がいいですよ」


ボクがそう言うといたる所から虚の姿が現れた。


「……罠か」


この量だと下手すると時間に間に合わない。
これだったら来火をパシっとけば良かったな。
でも来火は暫くほっとくって決めてるし、
今更来火に助けを求める気は全くもってない。
というか来火に助けられるのは死ぬより嫌だ。
だから……


「ボク、今日は用事があってすぐに行かなきゃならないんです。
だからさ……すぐに終わらせてもらうとするよ」


今日からサンドバッグが居なくなるし八つ当たりもかねて手加減なしでいくか。


「ボクのこと殺したかったらさっさと来なよ。
氷の牙にかみ殺されても知らないけどね」

「キシャアアアアア!!!」

「遅いよ」

「!?」


一匹の虚が襲いかかってきたが瞬歩でソイツの後ろに回りそしてそのまま切り伏せた。


「一体ずつ倒すなんて面倒ですし来るなら皆で来てほしいんだけど、
どうせこの場にいる虚全員がかかって来てもボクには勝てないんだし」

「小童ガ生意気ナ口ヲ!!」

「言われたくないなら……」


ボクは瞬歩で姿を消し、


「ボクを倒せる力をもってからにするんだね」


そう言ってボクのことを小童と言った虚とその近くにいた虚達を一瞬で消した。


「グガアアアアア!!」

「クソガアアアア!!」

「死ネエエエエエ!!」


これ以上こけにされてるがムカついたのか虚達は一斉に氷来に襲いかかってきた。


「そうそう、やっと皆で来たね。
……でも」


次の瞬間にはその場から氷来の姿は消え……


「……弱い。
これなら来火一人を相手にした方が百倍ましだよ」


その次の瞬間にはその場にいた虚が全て切られていた。


「キ、キサマ……何者ダ?
ソノ力……「死神とは違うって?」


ボクは運悪く辛うじて生き残った虚に止めを刺そうと目の前に立った。


「……冥土の土産に教えてあげる。
ボクは死神じゃない」

「!……ヤ、ヤハリキサマ……ハ」

「……死神の力を持ってしまった、







……ただの人間だよ」

「ナンダ……ガァ!」

「じゃあね。
もう二度と会うことはないよ」


ボクは虚に止めを刺しその場を去った。
いや、去ろうとしたけど出来なかった。


「確かここから虚の気配がしたはずなんだが……
……お前は?」

「!」


やばいな……無駄話してないでさっさと倒せばよかった。
今ここで彼とは会うつもりはなかったのに……


「……人に名前を聞くならまず自分から教えるのが礼儀だよ」

「……死神代行の黒崎一護だ」


ボクがそう言うと彼は自分の名前を言った。
そしてボクはそれにたいして……


「……名無しの権辺」


全くふざけた名前で返した。
だって名前を他人に言うつもりは全然無いし。


「言う気全く無いなお前!!
不公平だろそれ」

「どこが不公平なの?
今の名前はたった今ボク自身が名付けた名だよ。
ボクがそれを自分の名前と思う限りそれがボクの名前だ」

「だとしてもアレで良いのか!?
もうちょっとましな名前を考えろよ!!」

「だって考えんの面倒だし」

「良いのか!?
お前一生“権辺”って呼ばれるんだぞ!!」


黒崎said


虚の気配を感じて急いでその場に来た俺を待っていたのは死神の格好をした子供だった。
だが俺は明らかに他の死神とは違う何かを感じ取っていた。


「気にしないよ。
ボクのことを名前で言う人なんて限られてるし」


ただその何かがどうしても分からなかった。


「それでお前はどうしてここにいるんだ?」

「用事があってここを通りかかったら虚の大群に襲われた、
全部片付けたと思ったんだけど……」


突然俺たちの周りから大量の虚の気配がした。


「ハァ……キミの知り合い?」

「知らねえよ。
お前は心当たりがないのか?」

「あったら聞いてない」

「だよな……」


俺たちを虚たちは取り囲んだので、
必然的に俺たちは背中合わせになった。


「いけるか?」

「大丈夫だよ。
むしろボクはキミの方がちょっと心配だけどね」

「そうか、なら大丈夫だな」

「まあね、じゃあボクは先に仕掛けますか……」

「お、おい!」


止める声も聞かずに子供は虚の大群に突っ込んでいった。
急いで子供を追いかけようとしたら虚が道を塞いだため追いかけられなかった。


「……よし、やるか」


***


虚達を倒すのは案外早く終わった。
子供の方を助けようと思ったら……


「あ、終わったの?
遅かったからお茶菓子全部食べちゃった」


すでに終わってたらしくのんきに茶を飲んでいた。
……じゃなくて!


「お前何のんきに寛いでるんだよ!」


「え……邪魔しちゃ悪いかなって……」

「俺は別に戦闘マニアじゃねえよ!
というかそのちゃぶ台とお茶セットどっから持ってきたんだよ!!」

「細かいことは気にしない方が良いよ」

「細かいか!?」

「細かいよ」


い、言いきりやがったコイツ……


氷来said


「ま、ボクは無駄話をしているほど暇じゃない」

「なら何でさっきのんきに茶を飲んでたんだ?」

「それはそれ、これはこれ」


ただ単に疲れたからお土産のお茶菓子を食べてただけだけど。


「じゃあ、またすぐに会うけどボクはこれで」

「どういう意味だ?
って居ねえ!?」


黒崎クンはボクの言葉に疑問を抱いたがその前にボクは瞬歩で今度こそその場を去った。


「浦原サーン、お邪魔しまーす」


ボクは用事……というか来いって言われたから浦原商店の主人である浦原サンに会いに来た。
まったく人使いが荒いよ。
いくらボクでもこの人に面と向かってはそんなこと言えないけど。


「今日は遅かったッスね氷来くん」

「まあ、色々ありまして……」


どうしよ……虚のこと言った方が良いかな?
でもボクの予想で浦原サンたちに迷惑をかけるわけにはいかない……
……それにこの人に言うと間違いなくあの人たちの耳に入るよね。
止めとこ。


「ちょっと虚が出てそれを倒したら死神が来てその人と無駄話をしてました」


嘘は言ってない。
ただボクの不確かな予想を省いて大雑把に言っただけだ。


「死神……氷来くん」

「大丈夫です、正確には代行でしたから。
ほら浦原サンが前に言ってて来火がいまだに“黒嶋”と間違えている」

「黒崎さんですか……
そういえば来火ちゃんはどうしました?」

「ああ、来火は今学校です。
COOLとKOOLを間違えたから、
強制的に無理やり中学生から人生やり直させた」


来火の意見?
そんな些細なことは気にもしない。


「……間違える来火ちゃんも来火ちゃんですけど、
……流石に無理やりは……」

「これでも妥協したほうだよ。
ホントなら尸魂界に送って人生をやり直させたかったし」

「氷来くん、冗談でもそういうことを言うのは止めましょー」

「いやですね浦原サン、
ボクが冗談を言うとでも?」


ボク笑えない冗談嫌いだし。


「(……頑張ってください来火ちゃん)」


浦原は今はいない少女の行く末を祈った。




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