World-X ワールドクロス

□World-X第一幕
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第八章 初めて、おつかい


来火side


「ねーちゃん!お邪魔するぜ!」

「おう、千明か」


千明は窓から現れて俺たちに挨拶をした。
入り口から入れよ、と思ったが、
千明は俺と氷来を見習って窓から出入りするようになったためそう言えなかった。
そして千明は服を縫っている俺と俺にベッタリと引っ付いている雪兎を見た。


「雪兎はともかく……ねーちゃんは何やってるんだ?」

「雪兎の服を仕立て直してるんだ、女の子がいつまでもこんな格好じゃ可哀想だろ、ついでに心機一転」


そう言われて千明は雪兎の格好を見た。
彼女の格好は黒のボンテージではっきり言ったら目の付け所が困る服装である。
よくこんな格好であんな活発に動けたなと今更ながらに千明は感心した。


「それは分かったけど、どうしてその作る服がまた黒なんだ?
心機一転したいなら色も変えてあげろよ」

「俺だって変えようとした、そしたら雪兎が」

「黒!絶対黒!ユキト、所望、黒!!」


雪兎はピョンピョンと跳ねて千明と俺に訴えた。
俺はそれを横目に見てため息をついた。


「……と」

「いや、本人がいいならいいけど……」


自分で決めたことなら他人は口出しは出来ないし、
千明はそう付け足して冷蔵庫からジュースを取り出して飲んだ。


「全く女の子だってのにもうちょっとかわいらしくならないのか?」

「それをねーちゃんが言うか」


来火の明らかに女子とは思えない格好と言葉使いと大雑把な性格を知っている千明は来火の言葉に呆れた。
そういうならまずお前もどうにかしろと思いをこめて。


「俺に女の子らしさを求めるな、
一生を譲っても俺には無理だと思うし」

「……ねーちゃん、自覚してたんだ」

「………………………」


まさかこの俺が自覚しているとは思っていなかったのか少々面を喰らった顔で千明は言った。
そして俺はそんな認識をされていたことに傷ついたが、それを表に出すことはしなかった。
まあ……それでもダメージはあるんだが。


「と、これで完成。
雪兎、これ着てみろ」


そう言って俺はウサギのワッペンがついた袖なしワンピースを雪兎に手渡した。
うん、我ながら自信作だ。


「ありがとう!姉さん!着る!」


雪兎はそう言って他の部屋に着替えに行った。


「一応女の子らしさはつけたんだね、
流石ねーちゃん!そういった気遣いはできるんだ!」(ニヤニヤ)

「まあな、流石にただの黒尽くめじゃ味気ないだろ」


目ざとくワンピースのウサギのワッペンに気がついた千明が俺をからかった。


「さてと……そろそろこのアジトも捨てないとな」

「アジトを捨てるって……どうしたの?」

「いや、実はこの前、氷来から連絡があったんだけど」


俺はこの前のことを千明に話した。


この前―――



「時空管理局が俺たちを本格的に追っている?」

[うん、浦原さんから教えてもらった情報だし、
裏も取ったからそれは確実だよ]

「でも何でまた……確かに今まで追われていたけど本格的って訳じゃなかっただろ」


俺が持っている【燃え続ける紅蓮の炎】のせいで元々時空管理局に追われていたが、
あの人のおかげで本格的というわけではなかった。
それが一体なぜ本格的になったのかが分からない。


[アイツ、たしか真墨って言ってたっけ?]

「へ?ああ、確かそう言ってたぜ?」


氷来は突然この前の事件であった人物の名前をだした。


[アイツの斬魄刀は炎熱系だった、
そしてキミはこの前の事件で人の許可をえずにこともあろうか【燃え続ける紅蓮の炎】を使ったよねバカd「いや、だからそのときは人助けだったし!
お前と連絡もとれなかったんだからしょうがないだろ!」


このままいくとぐちぐちと文句を言われそうだったので話を遮った。
い、いや俺だってちょっとやっちまったってのはあるけどさ……


[……ちっ]

「いや、舌打ちすんなよ!!」


うわ、舌打ちしやがったコイツ。



[まあともかく、キミの迂闊な行動のせいで、
あの真墨のやったことが全部君のせいにされてるんだ]

「は?」


その時、俺の時が一瞬止まった。


「はあああぁぁぁぁぁ!!!!?
何で!?俺何もやってないぜ!?」


[さっきも言ったけど迂闊すぎたんだよキミの行動は、あの組織の人間達は全員焼死体だった。
他の痕跡が一切なくてそこに【燃え続ける紅蓮の炎】だけの痕跡があったらその持ち主が起こしたことだと勘違いする奴もいるよ。
真墨もそれが目的だったんだ、アレだけのことをしてすんなり帰ったのが疑問だったけどこれでやっと疑問が解けた]


……つまり真墨は俺たちをあの場で倒すことが目的ではなくて、
俺たちを管理局の敵に回したかったわけか。


「……完璧にはめられたな」


多分、俺たちがあの組織を襲うこともアイツには計画のうちだったんだろね、
そして何らかの形で俺が【燃え続ける紅蓮の炎】を使うことも。
ある意味関心だぜそれ。


[来火、感心しないで]

「ごめん、ごめん」


でもアイツにとって唯一の計算違いが出来た。

俺は目を閉じトテトテとヒヨコのように俺についてくるあの少女を思い浮かべた。

アイツにとってあの子がこっちに来たのは予想外のことだ、
……ここから何とか解決の糸口が見つかるといいんだが、
出来ることなら個人的にあの子にはあまり近づきたくないんだよな。
でも、まだしばらくは大丈夫だし、あの子のためにも出来るだけそばにいてあげよう。


[来火、あのガキには気をつけてね。
あのガキも真墨の罠かもしれない]

「ひょーきぃ、それは考えすぎだって、
あと何度も言ってるようにあの子はガキじゃなくて雪兎だって」


実は氷来は雪兎のことを中々名前で呼んでくれないのだ、
何度も俺が訂正を求めてもなぜか俺が怒られるし。


[はっ!あんな奴ガキで十分だよ]

「……なんでこんなに仲が悪いのか……」


氷来は腹黒で素直じゃないけど根はいい奴だし、

雪兎は無口でなに考えてんだお前と思うことはあるけど素直ないい子だ、
その二人がどうしてここまで仲が悪いんだ?
二人ともこの俺でも仲が悪くないのにどうしてだ?← ねーちゃん、紛れもなくあなたのせいです。by 千明


[それより来火、十代目たちのほうはどうした?]

「おう、この前みんなでカップラーメン買いに行ったぜ♪

[……だからキミは一生バカなんだよ]

「何で!?」


なぜだか知らないけどいきなりバカにされた。
俺何もしてないぜ!?


[あ、ごめん、ごめん、仲良くなったんだねって言いたかったんだけど言い間違えちゃった]

「すごい言い間違いだなそれ!?普通間違えないっての!?」

[あはは、実は口が滑って本音が出ちゃったんだけど]

「おい!じゃあ何で俺はバカにされてんだ!!」


悪びれもなく簡単に白状すんじゃねえよ。
てか結局何が原因で俺はバカにされてるんだっての。


[まあ、来火、こんな些細なことは放っておいて]

「俺にとっては一ミリたりとも些細じゃねぇよ」


なんせ理由も分からずにバカにされてるんだし。


《ボクにとっては1ミリ以下の些細なことだ》

お前……表出ろぉ!!今日という今日はぜってぇに許さねぇ!!

[バカかキミは、今いる場所が違うのにそれじゃ意味がないでしょ、
あと、表に出ろと言うならもう既に外にいるよボク]

「じゃあ、面かせ!この俺が直接引導を渡してやる!!」


マジで許さない。
今度こそこの俺が!
この俺が氷来を懲らしめてやるんだぜ!!


[嫌だよ、めんどくさい、
別にキミがこのボクに引導が渡すなんて夢にも思ってないけど、
めんどくさい事になると分かってるのにボクが行くわけないでしょ

「くっこの変なところでめんどくさがり屋がぁ!!」


絶対お前だけは許さないし!
このバーカ!変なところでめんどくさがり!
いつも仕事とかのときにはめんどくさがらないくせになんでこんなところでめんどくさがるんだバッキャロー!!





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