World-X ワールドクロス
□World-X第一幕
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第七章 “勉強は常日頃やっておけ”
もう夕暮れになり部活をしていた人が帰ろうとしているとき屋上に俺はいた。
「ねーちゃんとにーちゃん大丈夫かなぁ……」
実は二人を見送った後、
俺は俺の姿の式神を作り式神に授業を受けさせて俺はサボっていたのだった。
なぜサボったのか聞かれるとだって俺、次の授業嫌いだし。
「どうせ俺は攻撃魔術を使えないってーの!」
世界高校付属中学校、ここは様々な力が集まる場所。
もちろん普通の授業もするけどそれよりも特殊なのは魔術や特殊能力の授業があること。
その授業の中で最も俺が嫌いなのが攻撃魔術の授業。
何度やっても暴発して回りに被害が及ぶからな、もう攻撃魔術を覚えるのを諦めた。
「別に式神がいるからいーし!」
ずいぶん前に戻ってきた式神をかざしながら言った。
「けー……ん?」
ポケットにいれてあった【通信】と書かれた式神が震えた。
俺はそれを手にとり霊力を籠めた。
「もしもーし、誰だ?」
[おう、俺俺]
「オレオレ詐欺はお断りします。
それじゃあn[だぁー!!違う!!俺だって!俺だ!]
だからねーちゃん、名前を言えって。
「……分かってるってねーちゃん」
分かってるならそういうことすんな!最近氷来に似てきてないか!?とねーちゃんは言った。
紛らわしい言い方をするねーちゃんが悪いと思ったが一応ごめんと謝った。
この【通信】は電子機器が使えないねーちゃんや母さんの為にねーちゃんと合同で制作した、
他の【通信】を持った人と話が出来る優れものだ。
そんでもって今の通信相手はその【通信】の試作品を持ったねーちゃんだ。
「それでねーちゃん、仕事は無事に終わったの?」
無事に終わったからこそ俺に連絡をいれたと思うが一応聞いた。
[いや……終わったことは終わったんだが……]
いやに歯切れの悪い台詞だった。
何か問題があったのか?
「……どうした?」
[……説明するより見た方が早い。
千明、今から言う場所に大至急で来い、絶対に来い、一回しか言わないから頭に入れろよ、
あと絶対にメモはとるな]
「……了解」
俺はねーちゃんの言葉を一言一句逃さず頭にいれた。
そしてねーちゃんは全てを言い終え【通信】をきった。
俺は急いでねーちゃんが言った場所に向かった。
「……ここか」
ねーちゃんが言った場所には廃ビルが建っていた。
多分ここはねーちゃん達のアジトの一つだ。
俺は回りに人がいないのを確認して廃ビルにはいった。
「……まじか」
俺は目の前の光景に驚くとともに呆れた。
廃ビルの内装がどっかの高級ホテルのようだったからだ。
「……随分凝ったな〜」
どっちの趣味か知らないけどここまで凝るほどお金が有り余ってるのか二人とも。
貧ちゃん生活の俺に少しぐらい分けて欲しいぜ。
とにかくねーちゃん達を探そうと歩いた俺だが、
その時、ドッカーン!とかガシャーン!ピシャーン!とかギャアアアア!などの音が上から聞こえた。
……最後の悲鳴はねーちゃんだとして、爆撃音や物が壊れる音はまさか!
「ねーちゃん!にーちゃん!大丈夫か!?
………………何これ」
急いで上に上がり騒ぎの場所に駆けつけた俺を待っていたのは、
重火器をぶっぱなしてる俺ぐらいの女の子と高笑いしながら氷牙を始解して氷牙天月ぶっぱなしているにーちゃんの姿だった。
……いや、本当に何だこれ。
呆然としてると後ろから肩をガッシリ掴まれビックリして後ろを振り向くとそこには傷だらけのねーちゃんがいた。
「ね、ねーちゃん……大丈夫か?」
「……今の俺の姿を見て大丈夫だと思うなら大丈夫だろ」
「うん、全然大丈夫じゃないね」
ボロボロだよねーちゃん。
「ねーちゃん、あの子どうしたの?」
刀やら槍やら剣やら銃やらマシンガンやらバツーカやらを取り出してにーちゃんと戦っている女の子を指差した。
……てか、どっから取り出してんだ?
「ああ、操られてたから助けたら懐かれてどうしてか氷来と仲が悪い」
「ああ……」
ねーちゃんのその言葉で全てを理解した。
要は喧嘩する原因はねーちゃんじゃん。
昔の俺と一緒だな、あの子の考えてることは。
ねーちゃんに対するにーちゃんの扱いでねーちゃんを虐める奴って判断したんだろうな。
ねーちゃんに対するにーちゃんの扱いは何も知らない人から過激だもんな。
「千明、どうした?」
「いや、何でもない。
本当に何で喧嘩してるんだろなー」(棒読み)
まあ、それをねーちゃんに言っても何の解決にもならないので言わないことにした。
「千明にも分からないのか……どうしよあの二人」
「ほっとけば拳と拳のぶつかり合いで仲良くなると思うぜ」
もう投げやりになって言った。
だって本人が自覚してないから何を言っても無理だって。
なんだよこの無自覚のトラブルメーカーは。
「おう、そうか。なら良いんだが……
この前氷来に伝えそびれたことがあるんだがどうしよ」
「今言わなきゃ駄目なのか?」
俺は近くにあった冷蔵庫と棚からジュースとコップを取り出し飲んでいた。
人のアジトで寛ぐなって言われるけどだってタダだし。
「おう、仕事に関係あることだからな。
マフィアに誘われた」
「へーそうなんだー……って、え?」
なんて言いやがったこの人。
「ねーちゃん今なんて言った?」
「え?……マフィアに誘われたって……」
『何イィ!!!?』
ねーちゃんの言葉に驚いたのは俺だけじゃなかった。
にーちゃんや女の子も驚いていた。
「ら、来火ー?そんなことボクは一言も聞いてないんだけどー?」
そしてにーちゃんが珍しく取り乱してねーちゃんに問い詰めた。
にーちゃんが取り乱している光景は中々見れるものでなかったので記念に写真を取った。
そして消されないようにデータを他に移しとく。
「だって言う前にお前がどっか行ったし(いや、実を言うとたった今思い出したんだが)」
「……だとしてもいくらか言う機会があったよね?
キミのことだから忘れてたんだと思うけど」
ねーちゃんの心の声を読み取ったにーちゃんが一変して態度を黒くした。
ねーちゃん……素直に忘れたって言えばにーちゃんに怒られなかったのに……学習しないな。
千明は来火の学習能力の無さに呆れていたが、
実際は来火が言おうとしたときは来火が言う前に(言いそびれたのもあるが)氷来が去ったため言えなかった。
そして仕事でそのことを忘れてて今、思い出したのである。
通常の氷来ならそのことに気がついただが今の氷来は機嫌が下がりに下がりまくっている、そんな氷来が来火の事情に気がつくことは無かった。
来火は嘘は言っていない、ただタイミングが悪かっただけである。
「………………」
「……ひょ、氷来?なんかものすごく怖い笑顔なんだが……」
にーちゃんの無言の笑顔に怯えたねーちゃんは後ずさりをしたが、
後ろはすでに壁だったためこれ以上下がれなかった。
左右にも逃げようとしたらすでにねーちゃんの横には氷の壁ができていた。
後ろは壁、左右は氷の壁、そして前はにーちゃん。
あれだな今のねーちゃんには“逃げられない!!”ってウィンドウが頭に浮かんでそうだ。
「……【氷牙天月】」
「ぎゃあああああ!!!」
そして逃げ場が無くなったねーちゃんに、にーちゃんの【氷牙天月】が見事に決まった。
「!!」
そしてそんなねーちゃんを見た女の子は俺を横切ってねーちゃんの下へと走っていった。
にーちゃんを横に蹴り飛ばして。
「……このガキィ」
「にーちゃん落ち着け、間違ってもここでマジギレすんな」
にーちゃんがいつもの声ではなく完全にドスのきいた声、
しかもいつもの下手したら少女と間違われるしゃべり方ではなく、完全に男言葉で言ったので宥めた。
ここでにーちゃんがマジギレしたら大惨事になる。
というか真面目に言えばにーちゃんマジで大人気ない。
「えーと、にーちゃん、ねーちゃん、あとそこの子も、
とにかく色々情報を交換しようぜ?」
とにかく今も現在進行形でにーちゃんと女の子が睨み合ってるので情報を交換することを提案した。
俺もねーちゃんに言わなきゃいけないことがあるし。
『……………………』
き、気まずい!席についたのは良いけどそこの二人はいまだに睨み合ってるし、
わざわざにーちゃんも死神なんなくてもいいのに……あれ?
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