World-X ワールドクロス

□World-X第一幕
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第六章 漆黒の暗殺者!!



「“沢吉”、お前に折り入って頼みがある」

「だから沢田だって!
もう伊久堂くん覚える気無いよね!?」

「ああ、ツナはそういう名字だったな」


ツナの名字をド忘れしたから今のうろ覚えの名字を言って言い直してもらった。
それにしても覚える気が無いとは酷いな、
俺だって精一杯覚えようとはしているんだ。
……全然覚えられないが。


「……そ、それで俺に折り入って頼みって?」


ツナは俺に自分の名前をちゃんと覚えてもらうことを諦めた。


「ん?ああ、そうそう。
俺、次の授業エスケープするからよろしく!」


正確にはお昼まで屋上でのんびりしてるだけどな。


「……は?ってダメだよ!!
ちゃんと授業受けないと!」

「止めるな“セナ”
俺はどうしても行かないといけないんだ!!」

「いや、“セナ”じゃないから!!」

「気弱なのは一緒だけどな。
ただ向こうの方がカッコ良くなるのが早いぞ」


と鼻ちょうちんを出しながらリボーンは言った。
……寝ながら言うって凄いなこいつ。


「何の話!?」

「あ〜まぁ……切り出したのは俺だけどあまり気にしない方が良いぜ、
じゃ!俺行くから!!」

「い、伊久堂くん!そっち窓!」

「大丈夫だ!“ロッククライム ほら 乗り越えたら〜
グッド グッド スマイル!!”何だぜ!!」

「いや意味不明だし!?
というかそれ昨日見た昔録画したアニメのOP!」


いや中々面白かったぜ、ツッコミどころ満載で。


「あとついでだが発音も下手だったな」

「しょうがねえだろ。
英語なんか滅多に使わないしよっと!」


俺は勢いをつけて壁にへばりついた。


「あ、危ないよ!」

「大丈夫大丈夫!
てな訳で行ってくるぜ!!」


俺は猛スピードで壁をよじ登って行った。

「い……行っちゃった」

「だな……でも良いのかツナ、
屋上には奴が寝てるぞ」


ツナはリボーンの言葉に最初は理解できなかったがすぐさま事態を理解して顔色を変えた。


「…………あ」


「到着っと!!」


俺は教室の窓から屋上まで登りきった。
人間やれば出来るんだなこれは教訓になった。


「って先客かよ……」


早速ゴロゴロと寛いでいようと思ったが先に肩に風紀の腕章を付けた黒髪の少年が寝ていた。


「……ん?こいつ何処かで見たか?」


何処でだっけな〜確か最近だった気がするんだが……
いやでも風紀委員って会う機会が全然無いし、
てかまだそんな問題も起こしてなかったよな。
本当に誰だこいつ。


「う〜〜あ〜〜」

「何唸ってるの?」

「え?ああ実はっと!?」


声がする方向に振り向こうとしたが、
その前にトンファーで殴りかかられそうだったので急いで避けて蹴りをいれたがトンファーで防がれた。


「へぇ、避けるんだ」

「あっぶねえな……」


トンファーで殴りかかった奴を見たがそいつはさっきまで寝てた奴だった。


「何すんだよ!」

「ピーピーうるさい。
咬み殺す」

「っちょまて!会話をちゃんとしろよ!?」


そりゃ良く氷来にうるさいからってビルに吊るされたり海に沈められたりすることはあるが、
ここまで会話が可笑しいことは……あるな。
ってことはあれか?これある意味いつもの展開か?


「君は咬み殺しがいがありそうだ」

「ありそうだからって咬み殺そうとすんなよ!」


折角ユッタリ出来ると思ったのによ!!
俺に平穏は無いのかこんちくしょー!!


「ったく……分かった。
ちょっとだけなら相手してやるよ!!」


俺は【強化】した足で少年を蹴りつけたそれに対し少年はトンファーで防ぎ、
もう片方のトンファーで殴りかかってきたのでそれを手で受け止めた。


「(……っ!中々力のある一撃だな。
こりゃ横着しないで全体を強化した方が良いな)」

「ワオ、今度は中々楽しめそうだ」

「そりゃどうも!!」


トンファーごと少年を上に放り投げたが少年は上空でクルリと体勢を変え、
トンファーを地面に叩きつけた。


「校舎を壊す気かよおい……」


マジでどうする……これ以上騒いだら他の奴らが気づく、
かといって完膚なきまでに叩きのめしたら色々と面倒なことになりそうだし。
ただでさえアルコバレーノに怪しまれてんのにこれ以上厄介事を増やしたくない。
せめて一瞬でも隙があれば……


「伊久堂くん!大丈夫!?」

「!!」

「貰ったぁ!!」


突然ツナが現れて気を逸らした少年に渾身の頭突きを食らわせた。


「えええぇぇぇ!?」

「……痛い」


……【強化】しても痛いもんは痛いな。
全身強化じゃなくて頭だけに魔力を送れば良かったか。


「い、痛いですむの!?
ヒバリさんコンクリートにめり込んでるけど!!」


綱吉はあの雲雀がコンクリートにめり込んでいる姿を見た。
しかもめり込ました本人はあまりダメージを受けていないようだった。


「多分大丈夫だろ」

「(多分って……)」


しかし、やっと思い出した。
こいつは雲の守護者の雲雀恭弥だ、
見たことあるのは氷来に貰った資料で見たからか。


「……あ、そんじゃツナ。
こいつ頼んだ」


そう言って来火は雲雀の服を掴み振りかぶった。


「いやいやいやいや!?
危ない!危ないって!俺キャッチ出来ないから!!」

「いや冗談だって。
ツナにそんなこと出来ないの見れば分かるし」


そう言って来火は振りかぶる動作を止め、
綱吉は来火の言葉にそりゃそうだけど……と傷ついた。


「じゃツナ、そいつ頼んだ。
俺は寝てる」


「そ……そこまでして授業受けたくないんだ……」

「まーなー」


普通の授業はともかく今日の授業は逃げないと色々ヤバい。
あんにゃろ……何たってこんなところに入らせたんだよ。


「そ、それじゃあ俺は行くけど……」

「おう、頑張って授業受けてこい。
学生は勉強するのが仕事だ」

「う、うん(その仕事を早速放り投げてるけど!?)」


ツナは何かを言いたげな目で少年を背負って去っていった。
近くに山本と獄寺の気配があるから一人で大丈夫だろ。


「そんで千明、何時からお前は人を見捨てたり、
人の話を盗み聞きするような奴になったんだ?」


俺は誰もいない屋上の隅を見た。


「何だ、やっぱバレてたか」


その言葉とともに屋上の隅の景色が変わり一人の少年が現れた。


「当たり前だ、お前に姿を消す魔術を教えたのは俺だし、
お前らの気配は二年間、嫌というほど近くにいた」


そこらへんの奴と違って千明の気配は独特だ二年間もあれば俺でも覚える。


「その言い方は気に触るぜ“ねーちゃん”」


千明はからかうようにその言葉を言った。


「ねーちゃん言うな、今は伊久堂 来だ。
お前の後輩で不本意ながら男として転校してる」


今は居ないから良いけど誰かに聞かれたらそれはそれで面倒だから訂正をした。


「別に誰も居ないから良いじゃん」

「良くない、
そういうときに限って誰か来たりすんだからな!
しかもそのせいで東京タワーからヒモ無しバンジーを体験したり井戸に突き落とされたりするんだからな!!」


大丈夫だとたかをくくって油断したのが運の尽きなんだからな!!


「……ねーちゃん、もしかしてにーちゃんに怒られてそれやられたのか?」


やけに説明が具体的だなと感じた千明は来火に聞いた。


「……………………」

「(……図星か)」


そしてその反応から図星だと察した。




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