World-X ワールドクロス
□World-X第一幕
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第五章 不思議な少女
「……見失ったか」
虚の気配を感じられない、
完全に撒かれたな。
「さて……これからどうしようか」
浦原サンにあんなことを言った手前今更戻るわけにもいかない。
かと言ってこのまま無駄足を踏むのも癪だ。
……とりあえず今日のノルマ。
1,泊まる場所探す。
2,食材の調達。
3,虚の調査。
……だね。
虚は明日でも良いけど。
「さて、まずは人が居ないところに降りるか。寒いし」
今まで上空にいたからちょっと寒くなっちゃったよ。
「しかし今日のご飯どうしようかなー」
外食はボクのプライドが許さないしインスタントは最早料理じゃない、
……あ、来火ご飯どうするんだろ。
このボクが珍しくご飯を保存食にして冷蔵庫に入れてあげたんだから食べてると良いんだけど……
絶対食べてないなあのバカ
絶対ボクが帰ってくるまでカップラーメン三昧の生活を過ごしてる。
やっぱ来火一人にしなきゃ良かったかな……
「今からでも遅くはない、
帰った方が良い「な゛ー!!?」わぁ!?」
来火のことで考え事をしてたら上から大量の食材が落ちてきた。
「あたた……」
「ご、ごめんなさい!!」
こ、この子が転けて持っていたものをぶちまけてボクに落ちてきたのか……
いや、むしろ良くこの量の食材を持てたね。
そっちに感心するよ。
「大丈夫だよ、
それより早く拾わないと転がってどっかに行ちゃうよ?」
ボクは運悪く坂道に転がったリンゴを指差した。
「あぁ!?ま、待ってよーー!!」
「待てと言っても転がっちゃうものは転がっちゃうよ。
って居ないし……」
しかも周りの食材を放っておいてたった一つのリンゴを追いかける……
肉もあるようだし……カラスに盗まれても知らないよ?
「……しょうがない……ボクも手伝いますか」
「……ホント、良く持てたねあの子」
周りに散らばった食材を広い集めたら紙袋7個分の量があった。
あ、ちなみに関係ないけど紙袋はボクが用意したとって付きのやつだよ。
うん、ホントに関係ない。
「あ、さっきの……って!?集めてくれてたんですか!
あ、ありがとい、いやごめんなさい!!」
「……まず落ち着きなよ」
パニックになってたのでまず落ち着かせた。
「うぅ……ごめんなさい」
「謝らなくて良いよ。
こっちが勝手にやったことだし」
「で、でも!」
「大丈夫だって、それじゃ」
ガッシリ!!
「……は?」
この場を去ろうとしたら腕をガッシリと掴まれた。
「えーと……どうしたの?」
「家に来てください!!
お礼にご馳走を用意しますから!!」
「別にお構い無く……」
「そうときまれば早く行きましょう!!」
「いや、決まってないよ?」
ダメだこの子人の話聞いてない。
長年の経験からこういう場合は何をしても無理と判断したのでされるがままに連れてかれた。
「あの……荷物持つよ。
また転ばれても困るし」
「ご……ごめんなさい」
あと走る姿が危なっかしかったし、
また転ばれてボクに落ちてきたら嫌だったのでボクも荷物を持つことにした。
見るからに危なっかしいよこのこ。
「あ、あの!
ご馳走なんですけど、和食でも大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。
ボク好き嫌い無いし」
あの偏食の来火と違ってボクはちゃんと健康に良い食生活をしてるもんね。
……あのバカ、ボクがちゃんと作らなきゃ一生をカップラーメンで過ごすだろうし。
後で来火にご飯をちゃんと食べたか確認しようか……あ、ダメだ。
あのバカ、携帯電話持ってないし機械音痴で電話すらもまともに使えない。
むしろ壊す。
……ホント魔術士ってダメ人間だね。
来火の場合は魔術使いだけど。
「ど、どうしたんですか?」
「ん?いや、何でもない」
「あ、ここです」
着いた場所は和風の家……武家屋敷みたいだった。
「へ〜武家屋敷みたい。
やっぱりどんでん返しとか隠し部屋とかあるの?」
「残念ですけどないです。
家族に内緒で作ろうかなとは思ったんですけど、
凛ちゃんにバレちゃって……」
「そっか……残念だったね」
「はい……そういえばさっきやっぱりって言ってましたけど、
ある家を知ってるんですか?」
「知り合いの家にあった」
「へ〜お知り合いの方って忍者さんなんですか〜
うらやましいです」
「う〜ん?忍者かどうかは分からないけど、
忍者に匹敵するフットワークを持ってたから忍者なのかもね」
「その忍者さん見てみたいです!」
今、この場に第三者の意見を言うとしたらこうだろう。
ツッコミが居ねぇ
郁土 氷来、彼が腹黒、鬼畜になるのは馴染みのある人そして来火限定なのだった。
「上がって寛いでいてください。
さっさとすませちゃいますから!」
彼女はボクが持ってた荷物を引ったくって走っていったが……
「気をつけてねこの床で走ると「な゛ー!!?」……転けたね」
注意している最中に転けた。
言ってる側から転ぶ……言った後にやる来火よりましか。
「う〜〜」
「手伝うよ。
台所に持ってけば良いんだよね?」
泣きながら撒き散らかった食材を拾うのが、
あまりにも憐れ可哀想だったのでボクも手伝うことにした。
「何から何までごめんなさい……」
「良いって良いって、
そのかわりボクも料理して良い?
こう言っちゃ何だけど中々の腕前だよ」
食べるのが来火だから自信はないんだけど……
あのバカ……好物がジャンクフード、大好物がカップラーメン。
人が折角作ってあげたのにわざわざカップラーメンを作って食べるバカだからね。
「そうなんですか!
得意料理は何ですか?」
「う〜ん、一応洋食、中華、和食。
一通りできるよ」
「そうなんですか!
でも和食なら負けませんよ!」
「そう?ボクも中々の腕前のつもりなんだけど……」
……こう言っちゃ何だけど実際美味しいかどうかは分からないんだよね。
何せ食べるのが決まって来火だし、というより来火しか居ないしあのバカじゃ味見にもならないし。
何度も言うけど人が折角作ったのよりジャンクフードやカップラーメンを選ぶバカだし……
「じゃあ一緒に作っちゃいましょう!!」
「賛成、煮物作っても良い?」
「大歓迎です!!」
少女は煮物♪煮物♪とルンルン気分で台所に走っていった。
その様子が大好きなカップラーメンを手にした来火と被って思わず目を擦った。
そしてもう一つの事実に気がついた。
「あ……まいっか。
急ぐことじゃないし」
後回し後回し。
「何人分?」
「え?えーと。
お兄ちゃんと凛ちゃんと桜ちゃんとセイバーちゃんとライダーちゃんとアーチャーお兄ちゃんで――」
「ボクとキミを入れて八人だね」
何だこの大所帯。
しかもちょっと変な名前の人もいたし。
「ボク……居ない方が良かったんじゃないの?」
「いえ!今更一人増えようが減りようが、
今更家計は変わりませんから!!」
「……苦労してるんだね」
「が、頑張ってお兄ちゃんと二人でバイトしてるんですよ!
……ただ」
目の前の少女は言って良いものかと躊躇ったが、
なんと言うか……ボクはその前の話から言われなくても察した。
「……人数が多くてギリギリで養ってるだよね」
「うぅ……はい」
少女はガックシと肩を落とした。
ボクはそんなに落ち込むことじゃないよと肩を叩いた。
「大丈夫、一回の食事に少なくて五千個以上のカップラーメンを食べる奴よりは、
食費はましだって」
昔、仕事が終わった後来火にカップラーメン好きなだけ食べさせたら、
ものの数分で報酬が飛んだのは中々良い思い出だよ。
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