糸が魅せる
□紡ぎだす運命
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女の子らしい装飾が飾られた部屋。
そこで絆音は藁人形と五寸釘、金槌を手に持ち、頷いた。
[まてまてまてぇ!!?何をしようとしてるんだ!!?」
そんな絆音の姿に結梨が待ったをかけた。
『え、ストロング石島にちょっと呪いかけてみようかなって』
これぐらいは許されると思うんだ。
[やることがいちいち陰険だお前!]
・・・
『お兄ちゃん……大丈夫かな』
夕飯の時に飛び込んできた爆弾発言。
それはお兄ちゃんとストロング石島のデュエルのお話だった。
[自分で選んだことなんだから覚悟は出来ているだろ。
今お前がぐちぐち悩んでも変わらない]
『うぅ〜〜』
私のお父さん、榊 遊勝はチャンピオンだった、“だった”ということは今は違う。
3年前、ストロング石島とデュエルを行う前にお父さんは失踪した。
それから、お父さんは“逃げ出した元チャンピオン”と蔑まれている。
今回のデュエルだって、お父さんの子供だからそんな話が来たんだ。
『何がファン感謝デーだよ、皆してお兄ちゃん見世物にして……』
[なら、お前が代わるか?お前だって条件には当てはまるだろ]
『それ……は』
“お兄ちゃんと代わってストロング石島とデュエルする”
それを言えない自分が悔しかった。
[代わる勇気……向き合う勇気を持ってないなら、お前が愚痴言ってもしょうがない]
『…………………』
[……兄貴を信じてやれよ、あいつは今までの自分をぶち壊そうと頑張っているんだろ?
妹のお前が信じてやれなくてどうすんだって話だ]
『……うん、ごめんね』
[いや、だから……まあいい]
結梨の言葉にちょっとだけ救われながら、私はその時を待った。
・・・
『お母さん早く!!お兄ちゃんの試合終わっちゃうよ!!』
絆音は母親の榊 洋子を急かしながらデュエル会場へ向かっていた。
お母さんを急かし、私は会場へ向かった。
うう〜洗濯なんてしてるから〜!デュエルの開始に間に合わなかった!
「そんなに急かさなくても遊矢なら大丈夫」
『わ、私が急かしてるのは、お兄ちゃんがワンショットキルを決めて試合が終わっちゃうかもしれないからだもん!
別にお兄ちゃんが負けるって思ってないし!』
のんきに笑ってゆったり歩いてるお母さんに私はそう言った。
そうだもん、お兄ちゃん勝率普通だけど強いもん!
「そうかい?」
『そうなの!!だって私、お兄ちゃん信じるって決めたもん!
妹の私が信じなくてどうするんだって話だもん!!』
結梨の受け売りだけど、そっくりそのまま信じてみようかなって思う。
そんな私の言葉にお母さんは視線を合わせニコリと笑った。
「なら、急ごうか。
遊矢がさっさと試合終わらせないうちに」
『うん!』
私とお母さんは笑いあい、会場へ向かった。
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