Short story
□後悔
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「…あれ、気絶してしまいましたか」
バズーカ砲を片手に見下ろす竜崎の視線の先には白目を剥いて倒れている月がいた。
月の首から3センチ離れたところに何やら穴が開いている。
「3センチか。ワタリと良い勝負ですね」
ついでに録音テープもバズーカ砲で壊す。
…バズーカ砲で壊さなくても良いじゃないかと言われればそれまでだが。
その時スピーカーから声が聞こえた。
『私と良い勝負だなんて、大きく出たものですね、竜崎』
「……!…ワタリ」
しまった。全部見られてたか。
『録音テープはわざわざバズーカ砲で壊さなくてもよろしいのでは?』
「……」
言われてしまった。
『それに少々やりすぎだと思います。床の穴を直すのは一体誰だとお思いで?』
「……声に苛立ちが含まれているように聞こえるのは私の気のせいでしょうか…?ワタリ」
『どうでしょうな』
「……」
絶対怒ってますね…。
ここはおとなしく引き下がった方が無難か。
「…すみません」
『分かれば良いのです。月様の事は貴方に任せます。では後で紅茶のお代わりを持ってきますね』
「分かった。ありがとう」
『では』
通信が途切れ、月の方に目をやるとまだ気を失っていた。
「……放っときましょう」
急所を思い切り蹴られても平気な男だ。大丈夫だろう。
「疲れた。少し休もう…」
メインルームを出て私室に戻ろうと、足を進める。
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