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□飛ばない姫君
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孤独が幾つか過ぎていって



私はまた一人になった



だからもうずっと一人でいよう







「初めまして。」



未熟な召喚師は私にそう言った


「早く帰らせててください。」


私はそう言った





あなたは初めて喚べたことが嬉しくて




ただ私といた








「旅に出ますよ。」



未熟な召喚師は



どこからか来た手紙を読み



そう言った




少しは上達した召喚師



風や雷を喚んでも



私の仲間は喚ばない




「寂しいですか。」




「いいえ。」



私は孤独を望むから













召喚師との旅はつまらなかった


私はそこにいるだけ



召喚師は怪我を負った









「治しましょう。」



「治してもらえば、あなたは帰ってしまうでしょう。」



その通りだったので頷いた









召喚師は次の村まで耐え抜き


なんとか持ちこたえたが



見える世界を失った





「目を…」




「いいんですよ。」




願わないなら叶えない






私は退屈で



宿屋の者に戒めを受けた






「看病なんて望んでいません。」



無理に世話をした




召喚師は


一向に帰らない私に気づくと



「ありがとうございます。」



礼を言った




「宿の者が五月蝿いから、自分の為。」




召喚師は苦笑をする








数ヵ月経ち金が足りなくなった







初めて力を使わずに金を手に入れることになった




「パン屋の仕事でしょうか。」



「食堂の皿洗い。」




荒れた手を触ると申し訳なさそうな顔をする



早く治すためだ



しかたがない












怪我が治ると




「今まで苦労をかけましたね、ありがとうございます。もう帰っても良いですよ。」




「わかった。」




また私は孤独になった





「次は上手く喚びます。」







私の孤独は



孤独ではなくなった








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