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□鏡よ鏡
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初めて呼ばれた日
私は寝惚けた返事をしました
あなたは不安そうな表情をして
すぐに微笑みました
それからあなたは私の全てになりました
あなたがくれた力は
身動きをとれない私にとって
たった一つ
外の世界を知る術に
けれど外の世界など興味はありません
あなたがそれを望むから
私は外の世界を映し出す
あなたは私を見ずに
私が映し出した外の世界を見る
私は外の世界など見ずに
あなたを見る
あなたは気づかない
あなたに夫と娘ができました
私は外の世界を映し出します
私は外の世界を映し出すことしかできない
それはあなたがそう作ったから
なのにあなたはそれ以上を望む
あなたは美しいのに
一番を願う
私は比べなければいけない
私は真実を映さない
現実を映し出す
あなたが一番美しい
けれど現実は違う
映るのはあなたの娘
あなたはそれを受け入れ
認めなかった
あなたは認めないのに
その認めたくないものを見続ける
私は現実を映した
あなたは私の前に立つ
あの日の様に微笑む
最後にこの表情を見たのはいつだったか
私は
微笑み返せない自分を恨む
涙も流せぬ自分を恥じる
あなたは別れを告げ
薬を一瓶飲み干すと
老いた姿であなたは私に
謝る
私は現実を見る
あなたは娘にもらった靴を履き
踊り出す
靴からは湯気が立つ
あなたは倒れる
兵隊があなたを担ぐ
あなたは墓へ
私はあなたを映し出し
毎日祈りを捧げる
もう自分の望むものしか映さない
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