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□赤の国黒の国
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赤の城と黒の城がありました


赤の城には麗しき赤の王女がおり
美しさのために民の血を流させて微笑んでいました


黒の城には勇ましい黒の王がおり
民を愛し民に愛されていました


黒の国は聡明な黒の王の手腕により栄えており
何の問題も無いように見えていましたが
ただ一つ黒の王が赤の王女に思いを寄せることだけが民の悩みでした


黒の王は赤の王女が恋しくて
月が満ちる度に現れる
赤の国へとかかる階段の前に立ちすくんでいました




一歩を踏み出せないのは民の顔が浮かぶから



俺は黒の国の王
民を裏切ることはできぬ




王は階段を背にすると
もう二度とそこに戻ることはありませんでした










赤の国では赤の女王が血を浴びるために毎晩街にやってきては生娘を拐うので
国中が恐怖に覆われていました



国民は月が満ちると現れる
黒の国への階段を上って逃げようとしますが
女王の部屋の窓枠にかかるそこへ辿り着く前に屍となり果てました






満月の晩
赤の女王は窓の前に立ち
黒の王を想います



たくさんの血を浴びて私は綺麗になりました
なのにあなたは現れない





王女は窓を閉め
もう二度と開けることはありませんでした









あるところに二つの国があり
一つの国は幸福で
一つの国は恐怖に満ち溢れていたため
神は満月の夜に国を繋ぐ階段を生み出しました
そしていつか国を治める男女がひかれあい
どちらの国も幸福になるように恋を二つに割り
片方を男へ
もう片方を女へ与えました
神はそこまでして興味を失うと
次の国へと旅立っていきました




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