w
□私があなたを愛していた頃
1ページ/1ページ
愛していたのはいつの日か
あなたが帰る畦道を
いつ躓くかと袂を握りしめていた頃
あなたがこちらを振り向くのを
何度か瞬きを我慢して待っていた頃
あなたの声が聞こえたと思い
息を止めて耳を澄ましていた頃
あなたの手が私を喜ばせるのを楽しみにしていた日が来ていた頃
手など繋がずとも
安心して隣を歩いていた頃
確かに私はあなたを愛していた
あなたの腕が私と同じくらいになった頃
あなたが私よりも軽くなった頃
あなたの声が私より小さくなった頃
あなたが私を見ただけで不快な顔をするようになった頃
あなたが私を見なくなった頃
私はあなたを愛していた
あなたはいつの間にか煙になり
私の前から消え散った
私は逃さぬように息を吸い込んだけれど
苦しくってすぐに吐き出した
私があなたを愛していた頃
私はあなたを思った
あなたを感じようとした
あの煙の下には
白いあなたが残った
あなたは窮屈なところへカラコロと
音を鳴らして入っていった
私の口はなぜその入り口ではないのかと
あなたに文句を言った
あなたは何も言い返さなかった
それから何度かあなた以外の人と結ばれて
孫までできた
皆あなたに似ていない
あたしに似ているだけ
あたしがあなたを愛していた頃
それはいつ終わるのかわからなかった
やっと終わったのは
私が煙になる時だった
わたしはあなたを愛しに行きます
.