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□私があなたを愛していた頃
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愛していたのはいつの日か





あなたが帰る畦道を


いつ躓くかと袂を握りしめていた頃


あなたがこちらを振り向くのを
何度か瞬きを我慢して待っていた頃



あなたの声が聞こえたと思い
息を止めて耳を澄ましていた頃

あなたの手が私を喜ばせるのを楽しみにしていた日が来ていた頃


手など繋がずとも
安心して隣を歩いていた頃


確かに私はあなたを愛していた




あなたの腕が私と同じくらいになった頃


あなたが私よりも軽くなった頃

あなたの声が私より小さくなった頃


あなたが私を見ただけで不快な顔をするようになった頃


あなたが私を見なくなった頃






私はあなたを愛していた








あなたはいつの間にか煙になり
私の前から消え散った



私は逃さぬように息を吸い込んだけれど

苦しくってすぐに吐き出した







私があなたを愛していた頃





私はあなたを思った


あなたを感じようとした





あの煙の下には
白いあなたが残った


あなたは窮屈なところへカラコロと
音を鳴らして入っていった


私の口はなぜその入り口ではないのかと

あなたに文句を言った



あなたは何も言い返さなかった













それから何度かあなた以外の人と結ばれて
孫までできた


皆あなたに似ていない

あたしに似ているだけ







あたしがあなたを愛していた頃



それはいつ終わるのかわからなかった










やっと終わったのは


私が煙になる時だった





わたしはあなたを愛しに行きます












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