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□庇護
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棘は姫君を守るため城を取り囲んでいます
たとえ魔女の命令だろうとも
棘は美しい姫君を
この身が裂かれ焼かれようとも
眠りから覚ましはしないと誓ったのです



姫君が城に連れられて来たとき
棘は城の窓辺で綺麗な薔薇を咲かせていました



眠っている綺麗な姫君を一目見て
この美しい自分を触って欲しい
美しいと思って欲しい
棘は姫君に恋をし
そう願ったのです



目が覚めるまでと
緊張しながら寝顔を見つめていると魔女がやって来ました
魔女に杖を向けられたかと思うと
棘は城の周りを囲む程巨大になっていました
綺麗な薔薇は巨大な棘に裂かれて落ちてしまい
棘はただの棘になりました


酷い姿
こんな私を姫君には見せられない


棘は姫君の眠りを覚まそうとする者達を
一人として城に近づけることを許しませんでした












棘はいつしか姫君のことを忘れ
ただ侵入者を排除することだけが全てになりました


せっかく咲いた薔薇も
侵入者を引き裂くために蠢く棘で傷つけられてしまいます
薔薇が咲いては散っていく度に
棘の意識も無くなっていきました







最後の日




棘は自分の中心に小さな薔薇が咲いているのに気付きました


絡まりすぎて身動きをとれなくなったそこのおかげで
薔薇は綺麗な姿でいました

それは自分が囲む城で眠り続ける姫君の様だと

意識の絶えかけた棘は感じました



そうだね
もういいね


棘は自分が終わるときを決めました


これから来る者を私は認めよう
私は今回限りで姫君を解放するのだ


散らばる私を見て
きっと美しいだろう瞳は曇るのだろうか





棘はその身を引きちぎり
痛みと共に薔薇を外に出しました


これから私は死ぬけれど
お前はずっと生きるんだよ



届く限りの遠くへ薔薇を植え替えて
棘は微かに聞こえる馬の蹄の音に覚悟を決めました






こんな醜い姿を見られても良かったかな
あなたの綺麗な瞳を知りたかった











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