Long Dreamer
□FORECAST
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厚く垂れ込めた暗雲から、ようやくポツポツと落ちだした雨粒が、ガラスを叩く。
スピーカーからは早朝ラジオ。
響くエンジン音。
めまぐるしく流れる視界。
…………水戸はいまだに眠気に支配され朦朧とする頭で、何故今、自分が『ここ』にいるのかを考えなければならなかった。
*
最初に聞こえたのは───そう、チャイムの音だった。
「ピンポーン」と、小さいアパートにそれはよく響く。
昨晩ミケに付き合って夜更かしをした水戸は、身を起こすのが億劫で再び布団を被り直した。
隣で寝ていたミケの姿は既にない。
おそらくもう起きているのだ。
なら、新聞や宗教の勧誘くらいは追い払ってくれる筈だった。
自分の体温の移ったシーツに体を擦りつけ、水戸は再びまどろみに身を任せようと目を瞑り───
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