Long Dreamer
□PILGRIM
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あの時は、
雨が降っていた。
私は地面に横たわり、
『何故、生まれて来てしまったのか』
という事を、ぼんやりと考えていた。
それは人生の中で、
いつからか己の心を
ずっと支配してきた
疑問だった。
まだ少年と呼ばれたあの頃から、
あちこちとその答を探して、
何度も何度も傷ついた。
───やがて、
私は、下を向いて
ただ歩くことに専念するようになった。
疑問から目を伏せるのが、
大人になるということだった。
ただ、ときたま心の底に沈んだ疑問が、
ぷっかりと浮かんでくることがある。
『何故、生まれて来てしまったのか?』
その度にいてもたってもいられなくなって、
しかし答は見つからず、
探した分だけボロボロになって、
また 歩く。
でも、もう。
心身ともに疲れ果てた。
目を逸らしたまま歩くのも、
答を探して彷徨うのもうんざりだ。
諦めよう。
…答えは、
この世界のどこにもなかったのだと。
『巡礼者』
†