Long Dreamer
□First contact
2ページ/5ページ
視線を感じた。
それも複数。
場所は街中。
時刻は夜半。
日課であり趣味でもある、夜中の散歩をしている最中のことだった。
……いや、まあ。
『たんなる思い過ごしじゃないか』と言われたら、話はそれまでなのだが……
しかし私は、結構このテの勘を外さない自信があった。
それは実地経験に基づくもので。
───少々、荒れる予感だった。
*
「…出てきたらどう?」
私がそう呼びかけたのは、薄暗い路地裏でのこと。
廃ビルに囲まれた街の死角。
表通りの車の音が微かに聞こえる、ここは昼間さえ人気がない。
今は夜中も少し回ったような時刻。
ここなら多少派手なドンパチをやっても、一般人には迷惑をかけずに済むだろうと踏んだのだ。
もちろん言うまでもなく、誘いの一手。
相手の姿こそ確認できなかったが、その素性についての目星はついていた。
同じ『能力者』。
次期神様を決めるという、荒唐無稽なバトルに参加した、100名の中学生のうちの誰かだろう。
……それにしても、今は一次選考が終わったばかりの準備期間≠セというのに。
どこの誰かは知らないが、せっかちな連中である。
……あるいは、『準備期間だから』かもしれないが。
この二次選考準備期間中には特別ルールが存在する。
それは『能力者は気絶をしても能力を失わない。』というもの。
つまり相手は
協力を求めて来たか、
それとも私を本気で殺す気で来たか。(気絶で能力は失われないのだから、通常のバトルは無意味だ)
───その、どちらかなのだろう。
……ま。
たとえ『能力者』が相手とはいえ、争いごとはあまりしたくない。
……面倒だというのもあるけれど。
出来れば、穏便にお引き取り願いたいところだが…
さてさて、どうなるだろなぁ…
*
私は体ごと振り返る。
この路地は、一方が金網で塞がれているため、相手も私の背後に回り込むことは不可能だ。
わざわざ逃げ場のない、袋の鼠になるなんて…などと呆れることなかれ。
感じた視線は複数なのだ。
サシの勝負ならともかく、複数を相手にする場合、挟み撃ちの方がよほど恐い。
相手の『能力』がどんなものかは知らないが、
私には切り抜ける自信があった。
ただ、先ほど感じた視線の中に、ひとつだけ一際鋭いものがあったのが気掛かりと言えばそうだが。
*
待ち人たちは、すぐに現れた。
「誘いのつもりかい?」
わかっていて乗ってきたとは、大した自信だ。
.