Long Dreamer

□First contact
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視線を感じた。
それも複数。



場所は街中。

時刻は夜半。





日課であり趣味でもある、夜中の散歩をしている最中のことだった。




……いや、まあ。

『たんなる思い過ごしじゃないか』と言われたら、話はそれまでなのだが……

しかし私は、結構このテの勘を外さない自信があった。

それは実地経験に基づくもので。




───少々、荒れる予感だった。





*




「…出てきたらどう?」

私がそう呼びかけたのは、薄暗い路地裏でのこと。

廃ビルに囲まれた街の死角。

表通りの車の音が微かに聞こえる、ここは昼間さえ人気がない。


今は夜中も少し回ったような時刻。

ここなら多少派手なドンパチをやっても、一般人には迷惑をかけずに済むだろうと踏んだのだ。





もちろん言うまでもなく、誘いの一手。


相手の姿こそ確認できなかったが、その素性についての目星はついていた。




同じ『能力者』。





次期神様を決めるという、荒唐無稽なバトルに参加した、100名の中学生のうちの誰かだろう。






……それにしても、今は一次選考が終わったばかりの準備期間≠セというのに。

どこの誰かは知らないが、せっかちな連中である。

……あるいは、『準備期間だから』かもしれないが。










この二次選考準備期間中には特別ルールが存在する。

それは『能力者は気絶をしても能力を失わない。』というもの。



つまり相手は


協力を求めて来たか、
それとも私を本気で殺す気で来たか。(気絶で能力は失われないのだから、通常のバトルは無意味だ)


───その、どちらかなのだろう。







……ま。

たとえ『能力者』が相手とはいえ、争いごとはあまりしたくない。

……面倒だというのもあるけれど。


出来れば、穏便にお引き取り願いたいところだが…

さてさて、どうなるだろなぁ…



*



私は体ごと振り返る。

この路地は、一方が金網で塞がれているため、相手も私の背後に回り込むことは不可能だ。


わざわざ逃げ場のない、袋の鼠になるなんて…などと呆れることなかれ。

感じた視線は複数なのだ。


サシの勝負ならともかく、複数を相手にする場合、挟み撃ちの方がよほど恐い。

相手の『能力』がどんなものかは知らないが、
私には切り抜ける自信があった。



ただ、先ほど感じた視線の中に、ひとつだけ一際鋭いものがあったのが気掛かりと言えばそうだが。


*


待ち人たちは、すぐに現れた。


「誘いのつもりかい?」

わかっていて乗ってきたとは、大した自信だ。


.
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