リクエスト小説

□ヤキモチ。
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聖獣の宇宙に降り立ったぜフェルは辺りをキョロキョロと見回した。



「………へー、暫く見ねーうちに…すげー安定してきてる。皆、頑張ってんだな…」



「…あら?!もしかして…その後姿は、ゼフェル様ですか?!」


背後から急に名を呼ばれ、驚いて振り返ったその先には。


「へ?!………って、おめー…エンジュ、か?!」

「はい!!そうです、ゼフェル様!!お久し振りですね、こんなところでお会いできるなんて…私、運が良いです!!」

「大袈裟なやつだなー…。そーいえば、おめーココに残るって言ってたんだっけか…?」

「そうです、私の事、忘れていませんでしたか…ひょっとして?」

「ん…微妙だな」

「ひっどーい!!私、ゼフェル様にまたお会いできると思って、残ったんですよ?!」

「…な、んだって?!」

「…冗談ですよ、ゼフェル様?」

「…脅かすなっての…」

「ふふ、それより…今日はこちらの宇宙に御用がおありですか?」

「え?や…、ちょっと人に会いに来ただけなんだ」

「…それ、私に…じゃないですよね?」



悪戯っぽく微笑むエンジュに、ゼフェルが目を見張る。



「は…?!何…言ってんだ、おめー…?!」

「そんなに驚かなくてもいいじゃないですか、傷付いちゃうな…私」

「や…そうじゃなくってよー…!!」

「本気にしました?」

「な…?!」

「久し振りだから、お話したかっただけです…」

「…ったくよー、女ってのは…よくわかんねーな…」




呆れ顔で自分を見遣るゼフェルに気付かれぬよう…エンジュはそっと口の中で呟いた。




「私…本気ですよ?ゼフェル様…」








「あっ!!いっけない…、私、陛下の所へ行く途中だったんだ!!」

「じゃ、早く行けって。またな、エンジュ」

「ええ…気が重いですけど…」

「はあ?何だ、何かやらかしたのか?」

「違いますよ…アリオスさんと、一緒に呼ばれているんです」

「………?」

「最近、一緒に行動する機会が多いんです。でも、私…アリオスさんに嫌われているみたいで、辛いんですよね…」



そう言ったエンジュの表情は、途端に翳りを帯びてきた。
さっきまで楽しそうにゼフェルと話していた彼女を、ここまで気落ちさせてしまうアリオスの彼女に対する態度とは…。




「………想像はつくけど、な…」

「え…?何ですか?」

「や…こっちの話。いいから、んなコト気にすんなって。アイツ、いつもあんなんだろ?おめーだけって訳じゃねーって」

「いいえ…陛下には…そんな事ないですから…」

「そらーおめー…、コレットは女王だしなあ…」

「…そうじゃないんです!!」

「…はあ?」

「その…なんて言うか…私も上手く説明出来ないんですけど、感じたんです」

「何をだよ?」

「…あのお2人の間には、信頼だけじゃなく…それ以上の何かがあるような、空気を感じるんです」

「っ!!何かって、何だよ?!」

「きゃっ…?!」


エンジュの言葉にカッとなったゼフェルが勢い余って、彼女の肩に掴み掛かった。


「ゼ…フェル様?!」

「いーから、言えよ?!」

「あ…あの…、私…」


ゼフェルのあまりの剣幕にすっかり怯えきってしまったエンジュの口からは、上手く言葉を発する事が出来ない。


言ってはいけない事を、言ってしまったのだと…後悔した。
自分の醜い嫉妬を、この人にも知られ…同じ思いをさせてしまった事を、エンジュは今更ながらに自分を恥じた。



思わず口から付いて出た言葉を飲み込める筈も無く、思考が上手く働いてくれない代わりに…エンジュの瞳からは、大粒の涙が零れていた。



「あ…?!わ…、わりー、俺…」



見開かれた大きな瞳から零れゆく彼女の涙で、ゼフェルも我に返ると思いの外力を籠めてしまっていた手を離した。

バツが悪そうにエンジュに背を向けると、髪をがしがしと掻き毟る。
その様子を涙でぼやける瞳で見詰めていたエンジュが、ぽつりと呟いた。





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