リクエスト小説
□再会。
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「セイランさん………?」
「ランディ、その約束って…僕達がアルカディアを離れる時にした………、アレなのかい?」
「…ええ、そうです」
「っ…………!!」
「…でも、セイランさんが覚えていて下さったなんて…。あの時、俺から強引に…果たせるかどうかも判らない約束だったから………」
「?!………ランディ、君は…僕を何だと思っているんだい?!そこまで薄情な…冷たい人間だと…、ずっと君は僕の事をそう思ってたって事かい?」
「ちがっ………!!そうじゃありません!!」
「………違わないさ。僕を…僕の気持ちを疑っていたんだから………。
よく…判ったよ、君の僕への気持ちが。
…こんなことなら、守護聖になった事を心のどこかで喜んだ僕が…、バカみたいじゃないか………!!」
「え………?!セ、セイランさん、今…何て?!」
セイランの最後の方の呟きは、うっかり聞き逃してしまうほどのそれは小さなものであったが、ランディの耳はしっかりとそれを聞き取っていた。
ランディはセイランの足元まで駆け寄ると、彼の手を握り跪いた。
「………セイランさん、俺との約束…果たすのを待っていてくれたんですか?」
俯いたまま自分を見ようとしないセイランの顔を見たくて、覗き込むがうまい具合に横を向いて逸らされてしまう。
………………その瞬間、セイランの手を握ったままのランディの手の甲に暖かいものが触れた。
え………水…、じゃなくてっっ!!!!
コレ………涙?!
「セ…、セイランさん……っ?!…泣いて、いるんですか…?」
ランディは驚きのあまり、握っていた手を離し今度は彼の両肩を掴んだ。
肩を揺すられて、顔に掛かっていた髪がはらり、と落ちて現れた瞳からは幾筋もの涙が止まる術を失ったかの如く、はらはらと零れ落ちてゆく。
いつも自分を振り回している、気位の高い猫の様なこの人が泣くなんて………。
呆然とそんな事を考えながらも、初めて見るそのセイランの泣き顔に見惚れてしまっているランディ。
「………僕は…ずっと一人で生きてきたし、…これからもそれは変わらないと………そう、思ってた…。
そんな事は僕ににとって…当たり前で、………何でも無い事、だったのに………」
苦しそうに嗚咽を押し殺しながら、セイランは言葉を紡ぎ出そうとする。
「………セイランさん?」
「………何でもない…。今のは…僕の、戯言だ………」
「な………っ?!そんなに泣いているのに、何でも無いって事ないでしょう?!
………そこまで言っておいて、セイランさんずるいですよ………。大体、聖獣の宇宙に来てから今まで俺達、ロクに二人きりで会えなかったし、セイランさんはセイランさんで………」
ランディは不服そうに口を尖らせながらも、頬を赤く染め口籠もってしまった。
「………僕が、何だと言うんだい?」
ランディも最後まではっきり言わないのに対し、自分の事は棚に上げあからさまに不機嫌な声を出すセイラン。
「………セイランさんだって、やっと俺に会えたっていうのにちっとも嬉しそうじゃないし、こうして迎えに来てもすごく冷たいし、…そもそも約束するのだって、全部俺の方からじゃないですか?!
………俺の事…、そんなにっていうか…好きじゃないのかなって、不安だったんですよ………!!」
………………はあ?
「………君でも………、そんな事を考えるのかい…?」
「え………?ど、どういう意味ですか?それ………」
セイランの物言いに、いつものような皮肉めいた色は全く込められていないのが判る。
…つまりは、彼は本当に驚いているのだろう。
漸く収まり掛けてきたセイランの涙の跡をランディが優しく指で拭ってやると、黙っていたセイランがぽつり、と口を開く。
「………僕は、もう寝なおすよ」
そう言ってくるりと向きを変え、再びセイランはベッドの中へ潜り込んでしまった。
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