リクエスト小説
□イヤよイヤよも好きのうち?!
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「やっほー☆どう?ジュリアス、体の具合は」
能天気な声と共に見舞いの花を小脇に抱えたオリヴィエが顔を見せる。
「………すこぶる悪い」
「プ…、それは具合じゃなくて、機嫌でしょ?何言ってんの、子供じゃあるまいし」
「…全く。そなたにはすべてお見通し、か。
オリヴィエには到底敵わぬな…」
ジュリアスは苦笑しながらベッドから起き上がろうとしたが、オリヴィエがそれを慌てて止める。
「ああ、ダメダメ。ちゃんと寝てなきゃ良くならないじゃないの。
…あんたは執務以外の事もみんな自分で確認しなきゃ気が済まないタチだから、こんなコトになったんだよ?少しは自覚してもらわなきゃ困るんだよ。
もっとさ…、私達にも頼ってよ?皆、いつかはこうなるんじゃないかって、心配してた矢先にさ………」
オリヴィエの思いがけない言葉にジュリアスは驚いた。
「…そうか。皆にも随分心配をかけてしまったのだな。他人にあれこれ口うるさく言ってる私がこの様では、な」
瞼を閉じ、溜め息混じりに呟くジュリアスらしからぬ弱気な発言に、オリヴィエの口元も思わず緩んだ。
「………ふふ、誰もそんなコト思ってないって。私達もジュリアスを信頼してるし、あんたがいるからこそ皆安心してやってきてるんだから。
…それは、陛下も、ロザリアも…同じ気持ちだと、私は思ってるよ?」
「………オリヴィエ?」
「………なに?」
「そなた…熱でもあるのか?」
「…なによ、失礼しちゃうね………」
「いや…、そなたからそんな言葉が聞けるとは思わなかったのでな…」
「………私は一体ジュリアスに今までどう思われていたのかしらね?」
「………………」
「どうしたの?辛いの?熱はないの?」
黙って目を閉じたままのジュリアスの額に手をあてようとしたその時。
「………?部屋の外が何だか騒がしいねぇ…?」
「…………っ!!!!」
バタンと乱暴に開かれた扉には、息を切らしたゼフェルがいた。
「い、いけません、ゼフェル様!!ジュリアス様はただ今お休み中で…オリヴィエ様も中にいらっしゃいますから…!!」
慌ててゼフェルの後を使用人がバタバタろ追いかけて来た。
はっとオリヴィエが後ろへ振り返ると、そこにはもう少しで泣きそうな程に顔を歪ませたゼフェルを確認する。
「ゼフェル………、どうしたの?」
オリヴィエの口から出た名にジュリアスもぱち、と瞼を大きく見開き、扉の方を見遣る。
「………そーゆー事、かよ…」
絞り出すような苦々しく吐き出された言葉と共に、ゼフェルは踵を返し来た道を戻ろうとした。
その様子にオリヴィエは飛び掛けていた意識を取り戻し、
「ちょっと!!あのコを…、ゼフェルを捕まえて!!
逃がすんじゃないよ?!逃がしたら、この屋敷の人間全員クビにしちゃうから!!」
「………オリヴィエι」
夢の守護聖のおっそろしい言葉にジュリアスは目が点に、その場にいた使用人達は青くなり必死でゼフェルを追うと、玄関付近で捕獲に成功した。
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