リクエスト小説
□自覚のない彼と、不機嫌な彼。
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「失礼します。書類を………。
また、いないのですか………。一体、いつになったら首座の守護聖の自覚を持ってもらえるのでしょうか…。」
「うるせェな……!!用が済んだら早く出て行けってェの」
「っ?!………………ああ、そんなところにいたのですか…。しかし、執務時間中にソファーで横になっているのでは、いてもいなくても同じですけど」
「…………なんだと?コラ……、エルンスト。てめェこのレオナード様にケンカ売りに来たのかァ!?」
「………全く、大の大人がいちいち本当の事を指摘された位で腹を立てる様では困りますね…」
「チッ………。てめェもいつもいつも癇に障るヤローだな………。ホラ、もう用は済んだんなら早くここから出て行け!!」
「ちょっっ………。待ちなさい、私はまだあなたに用があるんですよ」
「オレ様にはそんなモン無ェよ!!」
「っ………、この前の書類に必要だと言ってあなたにお貸しした資料。
あれが、私の方でも入用になったので返して欲しいんですよ。
………あれは、私の研究員時代でもなかなか興味深い事例でしてね、故にとても貴重なデータなんですよ………って、レ、レオナード??」
「………………ア、……アレか?」
「………ええ、何か問題でも?」
「………ワリィ、この前間違えていらねェ書類と一緒に捨てちまったんだよな………」
「えぇっっ??!!」
「………マジ……、悪いな」
「レ、レオナード?!なんて事を……!!」
「………だからァ、悪かったって……」
「………………」
「全く…二度手間になってしまったな…」
納得いかない顔でブツブツと一人呟きながら中庭へとやって来たエルンスト。
そこには見覚えのある人物が――――――。
「ん?よー、エルンストじゃねーか。久し振りだなー、オイ」
「これは………ゼフェル様!
こんな所でお会いするとは…。お元気そうでなによりです」
「おめーもな…。それよりよー、おめー、最近レオナードのヤツに振り回されてんだって?アイツに説教したってムダだろ?」
「………良くご存知で。ああ、アリオスからお聞きになられたのですね?それで今日はこちらに…?」
「っ////。なんだ………、知ってたのかよ」
バツの悪そうな、頬を染め口を尖らすゼフェルに、エルンストは、はっとする。
「あ…。もしかして、秘密だったのでしょうか?
私は誰にも他言はしておりませんが、必要であれば私もこの事は忘れます」
「はあ?オイ、何だ?別にいーんだよ、そんな余計な気ィ遣う必要なんて無いんだよ」
「………そうなのですか?」
「ククッ…。おめー、変なヤツだよなー?
…もっと驚いたり引かれたりするかと思ってたのによ。意外だったな、この反応は」
ゼフェルは両手を頭の後ろで組みながらやや呆れた風な表情でエルンストを見遣る。
「………?そうでしょうか…。人を好きになる事がそんなに驚く様な事とは思えませんが…」
「………あのな、そーじゃねーっての……」
「何だ?………恋人を待ってたんだと思えば…その恋人の浮気現場に来ちまったのか?俺は………」
「「!!」」
………いつから居たのであろうか。
そこにはすこぶる機嫌を害した様子のアリオスが―――――。
「なっっ////、何言ってんだよ!!うっ……浮気って…、俺がそんなコトする訳ねーだろっ?!」
「へえ………?」
「ああ、アリオス。………私の事はお気になさらず。
…それより、つまらない嫉妬はそれ位にしたらどうですか?折角の逢瀬をくだらない時間で潰すのはどうかと思いますね。あなた方はそうそう頻繁に逢えないのでしょうから。
………では、私はこれで」
そう言うと、エルンストは立ち去った。
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