リクエスト小説
□惚れた弱み。
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深夜の地下の作業室で、金属の擦れ合う音が聞こえてくる。
「……はぁ。ったく…。
悔しーけど、いい仕事してやがんな…。こりゃ、ちょっとやそっとじゃ簡単にはいかねーぞ…」
カタン、と握っていたドライバーを机の上に転がすと、両手を頭の後ろで組み、座っていた椅子の背もたれに体を預ける。
「―――――よぉ、勝手に上がらせてもらったぜ?」
ふいにドアの方から響く声に驚く。
「……なっ…?!ア、アリオス!!てめー、いつの間に?!……」
ゼフェルはガタン、と音を立て、机に両手を付き立ち上がった。
「…さっきから…な。お前があんまり熱中してるもんだから、声掛けそびれた」
そう言いながらアリオスは室内に入って来た。
ゼフェルは再び椅子に座り直し、その様をじっと見詰めている。
「……随分と久しぶりじゃねーか。…生きてたとは知らなかったぜ…?」
アリオスはゼフェルの言葉に苦笑をもらす。
「……まあ、俺もいろいろと忙しい身でね……」
いつの間にか椅子の横に立ち、背もたれに手を掛け、ゼフェルの顎を捕えてこちらを向かせた。
「……会えない間、ずっとお前の事考えてた……」
そっとゼフェルに口付ける。
久々にアリオスから与えられるその感触は、甘く、とろける様なもので、ゼフェルの体の芯に熱をもたらす。
「んっ………ふ……」
自然と鼻から甘い息が洩れてしまう。
名残惜し気に離れてゆくアリオスの唇を、ゼフェルは潤んだ瞳で追う。
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