ふと目が覚めた。


 誰かの手が、私の肩に回されている。


(誰…?)

 はっきりしない頭で考えながらも体は腕に預けたままで。

(…どうして?)

 よく、わからない。

 少し居心地悪くなって身をよじってみたら、頭の上から落ち着いた声が降ってきた。



「起きたのか」



 誰だっただろう。

 思い出せない。いつも聞いている声の気がするのに。



「…いや。まだ夢の中か」



 音はわずかに笑いを含んだが、嫌な感じはしなかった。

 からかうよりはむしろ慈しむような響きで心地よい。


 この人、私を好きでいてくれているのかな。

 そうだといいな。




「もう少し眠っていなさい。時間はある」



 そっと頭を撫でられつつ。

 はい、と素直に心の中で返事して、私のまぶたはまた閉じる。






<まどろみ消去>  



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