Dream(other)
□幸いあれ、人の子に
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「疑おうが疑うまいが、神はいるのだから仕方がない」
神はどうか知らないが、少なくとも天使はいる。
なぜ断言できるかって?
そう言ったのが、大天使メタトロンその人だったからだ。
天使にしては妙に目元に色気のあるおっさんは、私が酒を飲んでいるとたまに現れる。
言っておくが酔った幻覚ではない。1杯目を頼んでいる時点で既に現れているからだ。
それに、幻覚ならもっと、私のイメージに近い金髪ふわふわ少年のはず。
あともちろん、酒なんか飲まない。
その光景を見るたび、私は毎回聞くことにしている。
まあ、一応だ。言ってもやめないだろうから。
「酒飲んでいいの?」
「飲んでいないと言ってるだろう、何回言わせる気だ」
彼はウイスキーを口に含み、それからすぐに吐き出す。
「天使が規律破ってどうするんです」
「破ってはいない」
「だとしてもスレスレだろうに」
「我々の規律は柔軟なのだ」
また一口含んでから、もったいぶって彼は言った。
どうやらいつもの、うさんくさい宗教談義をはじめる気らしい。
宗教にうとい私は、早速出そうなあくびをかみ殺す。
「聖書を見てみろ、曖昧極まりないだろう。どう解釈するかなんて何通りも思いつく」
「何ではっきり書かなかったわけ」
「信仰を広めるためさ。万人に受け入れられるには、曖昧にするのが一番だろう。それぞれが自分の好きなように思いこめる。これでも結構考えたんだぞ」
「…あなたが書いたの?」
「シナイ山で口述筆記させたのさ。まあ、半分はその場でアドリブだが」
メタトロンは、やれやれといった顔をした。
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