Dream(HP)
□オールディーズ
1ページ/13ページ
人は変わるものだ。
「お前は我輩に謝ってばかりだった」
「だって怖かったんだもの」
まるで悪びれた様子もなくレイは言う。
「あの頃のあなたはピリピリしていて、とても近づきたいと思えなかったわ」
「それは結構ですな」
「あ、ひどい」
「あの頃のお前こそ、とても近づきたいとは思えなかったのだがね」
「それは結構」
レイは得意げに口角を上げる。
「なるほど、あなたとって高嶺の花ってやつだったのね」
「誰が…」
知らないうちに呆れ声になった。
いつもこんな調子だ。からかっているのか真面目なのか分からない。
いや、今回は明らかにからかわれているのだが…とにかく、レイとの会話がスネイプは得意ではない。
学生だったあの時は、こんな人間だなんて思いもしなかった。
彼女を見る目のなにもかもが変わったのは、1年前に再会した時からだ。
***
『もちろん存じあげておりますぞ、ミス・コーリ』
スネイプは例年の通り、存分に皮肉を込めた言葉をかけた。
『その若さで防衛術をご担当とは立派ですな。噂にならない方がおかしい』
ところが彼女は戸惑うどころか、おかしそうにくすりと微笑んだだけだった。
『若いって言っても、あなたと同い年ですけどね』
同窓生ですよ。レイは言った。
『レイ・コーリって名前に聞き覚えない?ハッフルパフで、魔法薬学が苦手な』
そう、薬学が苦手だったの。
噛んで含めるように繰り返す。
その言葉を辿れば、該当人物にたどり着くのに時間はかからなかった。
――しかしそれはつまり、
あの小動物のような少女が、
強いというよりしたたかそうなこの女に、
…なったということか?
ここまで大幅な変化(もはや変身や人格崩壊に近い)なんて有り得るのだろうか?
――ない。
少なくとも自分の知る範囲内では有り得ない。
『覚えていてくれて嬉しいわ、セブルス』
彼の僅かな変化に気付いたらしく、レイはそう言った。
どこがハッフルパフだ。
油断ならない奴め。
にっこり微笑む彼女に警戒することを、スネイプは自らに課したのだった。
*****