Dream(HP)
□よるの夢はまこと
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同僚の病気は勘弁してもらいたい、と常々彼は思っていた。
自分に関わりあいのある同僚なら尚更。
心配だからではない。とばっちりがくるからだ。
自分の考えは正しい、と今日彼は再確認した。
大広間で出会ったマダム・ポンフリーは何気なく言った。
「そうそうスネイプ先生、今日はスプラウト先生はお休みですからね」
「…休み?」
「風邪ひき草の世話をしているうちに、自分にもひどい風邪をうつしてしまったらしくて」
「今日は、薬草をいただく約束をしていたのだが」
「無理です」
即答だった。
「安静第一。授業すら休講なのですから、自分でお採りになってはいかが?」
そうして彼女は、薬草の世話を山ほど頼まなければ、ああ忙しい、とハッフルパフの机に走っていった。
今日の予定は、授業が午前にぎっしりと、放課後に依頼されていた調剤、さらに宿題の添削。
明日の授業の準備はいつもより時間がかかったはずだ。
うんざりする。
できないからいつも頼んでいるのに、これに加えて自分で採りにいけだと?
『くそ…なんで風邪をひいたのだスプラウトめ…風邪ひき草なんぞ育てるな…用途はごく限られているだろうが…』
こういう愚痴を大人は口に出さない。
その代わり別の方法で発散させる。
彼は朝食後廊下で出会ったグリフィンドール生すべてを、いつもに増して強引な方法で減点した。
それでもまじめな彼は、なんとか添削を休み時間中に終わらせ無理やり空けた午後を採集にあてることにした。
午前中は授業か添削しかしていない。
時計を見ると昼食の時間はとっくに過ぎているのを見て、さらにイライラした。
昼食抜きで薬草採りの肉体労働とは、なんと光栄な仕事だろうな!!
暗い地下室から外に出ると、誰もいない。
授業中だから当然だが、減点で発散させられないのは多少惜しかった。
細いけもの道を怒りに任せて歩いていく。
ついた先には乾燥させたニワヤナギの束が、摘んであるドクダミが入ったかごのすぐ側に置いてあった。
スプラウトが病気ながら気を利かせてくれたらしい。
これを見てスネイプはようやく少しだけ溜飲を下げた。
ふわふわ浮かぶニワヤナギとドクダミを引き連れて引き返す。
途中、道から少しはなれた木の下に何かを見つけた。
さっきは怒りで目に入らなかったが、黒い物体がある。
人ほどの大きさもあるだろうか。
近づいてみて、それが本当に人だと分かったとき、彼の口元に笑みが浮かんだ。
生徒ならば減点するのに絶好の機会だ。
彼はさらに近づいた。
芝生を踏みしめるたび、かさ、と草の擦れる音がした。
――――