Dream(HP)
□The JINX
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「さて、当然予習してきていることとは思うが、今回は――」
頭の中でじん、と響く。
低い音色に感じるものは、心地よいとか快いとかそういう次元ではない、と思う。
むしろ、呪われている感覚に近い。
体の動きを縛り、脳から思考を奪い、感覚を鈍らせてゆく。
声を聞いてはいるが、話は聞こえない。
薬のレシピがぎっしりと書かれた黒板を白い指が指す。細く長い。男の手とは思えない。
腕を動かすごとに、ローブの袖がはためく。残像は滑らかに、流線を描く。
次に私は、深い黒に魅入られる。決して拡散しない、薄まらないように思える。その色だけで世界を作り出している。
肩まで伸ばした髪が神経質に揺れるのを見つめ、薄い唇から生まれる言葉を聴きながら、私は、鷲鼻の上にある目を見た。
長くは見ていられない。
あまりに暗く、あまりに魅き付けられ、吸い込まれてしまうような気がする。
私が目を見ている時間なんて、ほんの僅かだ。
それなのに、その僅かな時間に、
目が合ってしまった。
「質問がおありですかな?ミス・コーリ」
「…いいえ」
「ではこの後の作業を説明していただこうか。まず何から始める?」
「………すみません」
「グリフィンドール5点減点。授業終了後ここに残るように」
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