Dream(HP)
□Secret Admirer
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さて、当日。
朝食の席についた生徒の間を、大量のふくろうが飛びまわる。
「な、なんだなんだ」
レイの元にも何羽か降り立った。
足には赤やピンクのバレンタインカード。
彼らは手元のオートミールを勝手につっつき、一息つくと帰路に旅立つ。
「あら、朝から3枚ももらうなんて幸先いいじゃない」
「…誰だ…誰なんだ…」
「それが分からないのがいいんじゃないか」
「ええい気になる!名を名乗れ不届き者めが!!」
「なら今日一日で探しゃいいだろ…僕んところ全然こないや」
ロンが恨めしそうにレイを見やる。
「これで夜までなかった日にはみじめだぜ…レイ、チョコほんとにくれるんだろうな」
「あったりまえよ!」
レイはカバンと一緒に床に置いている大きなカゴを持ち上げた。
中には大量の、親指ほどの包み。すべて水色の包装紙だ。
「はい、ハリー」
「あ、ありがとう」
「ロン、どうぞ」
「ありがとう!」
「お二人さん」
「「お返しはイタズラでいいよな?」」
「それは困る…イタズラ用品ならいいけどね」
「さあさあ、チョコはいらんかね〜」
レイはそれから一日中、配り歩いていた。
リストの名前に横線がどんどん入っていく。
***
「マルフォイ君。これを差し上げよう」
「な…僕はリストになんか署名してないぞ!」
「飛び入り歓迎に決まってるじゃないか」
ごそごそカゴを探り、水色の包みを取り出す。
「なんと珍しいことにレイ様の手作りだ。心して召し上がれ」
「お前、食えるもの作れるのか?」
「大丈夫、かろうじて腹はこわさない」
「…かろうじて?」
「セーフって意味さ。はい、クラッブとゴイルにも」
二人は嬉しそうに受け取り、その場で封を開けた。
中にはカラフルなスプレーで彩られた、丸い形のチョコが3つ。
「…見た目はまともだ」
「でっしょー?頑張ったよ私」
ドラコが受け取ったのを見とどけるとすぐ、レイはすたすた歩き出した。
「そんじゃ、三倍返し頼むねーv」
「お前それが目的なんだな!?返すか!」
しかし3月14日にはきっちり三倍返す律儀な金持ちのお坊ちゃん。
ちなみに彼は自分だけが三倍だということに気づいていない。
「ちょっと日本人、いい気になってないかしら?」
「あらスリザリンのお嬢様方。どうぞ」
「え、私たちにも?」
「そうですよ。友チョコというのもあるのです」
にっこり微笑む。
「あなた方はお料理お得意ですか?」
「も、もちろんよ」
「そうでしょうね、見るからに上手そう。こんなチョコのお返しにはもったいないくらいのお菓子ができるんでしょうね」
「当然じゃない。一ヵ月後に、証明してあげるわ」
「いよーし!最高!」
これなら彼女らは、例え本当は並の腕前だったとしてもかなり頑張ってくれるだろう。
抜かりない作戦である。
ちなみに料理のうまい人には、あらかじめ全て渡してある。こちらも抜かりない。
さらに、レイは防衛術の教室にも乱入した。
「来たね、レイ。まるでトリックオアトリートだ」
「あ、先生方にはせびりませんよ。義理チョコってお世話になってる方に対するお礼なんで(本来は)」
「甘いものは大好きでね。お茶にするかい?」
「よし来たぁ!」
こんな調子で、実は教師からもお返しに値するものはしっかりもらっていたりする。
本日の成果は、大幅な黒字に違いない。
レイはスキップを踏みながら配って回った。
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