Dream(HP)

□ジェントル
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 できるだけ大またで、勢いよく歩く。


 少しでも開いたと思えば軽く走って間を詰める。

 それを何回か繰り返した。


 今も見失わないよう、黒いローブだけをじっと見つめて歩いている。


 何度も言うが、必死だ。

 ホグワーツで遭難なんて冗談じゃない。






 どれぐらい続いただろうか。




 歩く速度は緩めないままだったが、

前を歩く男に動きがあることに気づいた。




 しゅ、と杖を取り出す。

 そんな音が聞こえそうなほど、なめらかで勢いのある動作だった。


 減点対象でも見つけたかと思ったが、

 スネイプは手首を返して、杖先をほんの少し動かしただけ。




「え」




 手元がいきなり軽くなった。


 見ると羊皮紙の束が、半分ほどの厚みに減っている。




「…あれ?」

「ここだ」



 彼の杖と反対側でカサリと音がする。


 羊皮紙の束は確かにそこにあった。




 スネイプはちら、と振り返った。

 ほんの一瞬だけ目が合った。






「バラ撒かれてはかなわないのでね」






 すぐに前を向く。




「せいぜいしっかり抱えていたまえ」








「…あ、ありがとうございます」


 しばらくあっけにとられていた私は、我に返ってようやく礼を言った。


 言いながら小走りで詰める。

 また距離が開いてしまった。








…そういえばここは、


 紳士の国だったんだっけ。






 いつも通りの皮肉な口調だったのに、

 何故かふと思い出した。
















…だったら速度も落としてもらえないものでしょうか、ジェントルマン。




 ついでに私は黒い背中に念じてみた。 




End.
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