Dream(HP)
□バックギャモン
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さて、と辺りを見渡す。
朝食の時間が終わってしまった今、食べ物が手に入るのは調理場しかないが、レイはその場所を知らない。
確実に知っているのは双子だけれど、さっき弟をいじめにクィディッチ競技場へ行ってしまった。
それから色々世話してくれるのに何だが、起きぬけかつ空腹であの二人の相手をするのはかなりしんどい。
つか不可能。
という訳で自力で探すことに決めたのだった。
「うーん、とりあえず大広間方面。魔法使うとはいえ近い方が便利。
それから、方角は…北?食べ物扱うのに日当たりよすぎると腐っちゃうしー」
思い込みに近い予想でずんずん歩く。
するとタイミングのよいことに。
「レイ!」
眼鏡をかけた少年が走り寄ってきた。
「ハリー!調理場ってどこか知ってる?」
「うん、分かると思うけど…?」
ハリーは不思議そうに答えた。
規則正しい生活を送る我らが英雄には、理由の予想がつかなかったらしい。
レイは簡潔明快に説明した。
「腹減ったの」
「……ああ…なるほどね。案内するよ」
***
「僕、ハグリッドのところから帰ってきたんだけど…」
ハリーはいつもより若干多く喋っている。
いつもと違う聞き手がいるのが嬉しいようだ。
もっとも、話に区切りがつくたびレイをちらちら見ているあたり、別の理由もありそうだ。
「ロンと双子がなんか口喧嘩しながら歩いてた。嫉妬なんて女々しいぞとか、ヘタレは引っ込んでろとか」
「あ、見たんだ。…何だ、その見苦しい争いは」
「まあね。でも傍目に分かりやすいのはいいね。扱いやすいし」
「黒いなあ…」
「たくましいんだよ」
「……だね。まあ嫌いじゃあないけど」
「ほんと?」
「判官びいきなんていうけど、負けっぱなしよりは気分がいいね」
思わず破顔する相手を見て、レイは少し笑った。少し大人びた顔をしているこの少年が、こんな顔をするのが好きなのだ。
「そういえば、こないだよく迷うって言ってたけど…大丈夫?」
「…まだ不安、かな」
「分からなかったら僕に聞いてね。双子ほどじゃないけどよく知ってるから」
「へえ、それすごいね」
「夏休み以外はずっといるからね。それに実は、秘密があるんだ。レイになら教えてもいいかな…」
「え、なに?それ知ったら、わたしもホグワーツマスターになれる?」
レイは思わず立ち止まり、顔を近づけてよく聞こうとした。
「秘密ってなんだい?実は僕っておしゃぶりがないと眠れないんだ―、とか?」
振り返ると、金髪の少年が偉そうに腕を組んで立っていた。
「チッ、何だよマルフォイ」
「…舌打ちはよくないと思う、少年よ」
ガラリと変わった雰囲気に、思わずレイは突っ込んだ。
「誰を連れてるかと思えばレイじゃないか、ポッターなんかとつるむなって言っただろう」
「マルフォイ、グリフィンドールは嫌いじゃなかったか?」
「レイは別さ」
「僕だって」
「ってか君らよく飽きないよね、喧嘩…」
ぼそりと突っ込んだレイに向き直って、3割増の笑顔でドラコが言った。
「レイ、甘いものが好きだったよな?父上が送ってくださったケーキがあるんだ」
「え、くれんの?」
「ああ、1ホール全部な」
「やた―!朝ご飯食べてないんだよね!」
喜ぶレイの横で、ドラコは勝ち誇った笑みを浮かべながらハリーを見下ろした。
「ついてこい」
「ちょっと、レイ!」
「ドラコも友達ですから!」
「…仕方ないなあ…友達か…」
ハリーは引き止める理由が思い付かず、二人を見送った。
笑顔で。
「よかったなマルフォイ。
た・だ・の・友達で!!」
「う、うるさいぞ、ポッター!」
両方とも、廊下によく響いたそうだ。
◇ハリー…ヒーローはタダでは負けない・1コマ進む
◇ドラコ…試合に勝って勝負に負ける・2コマ進む
◇レイ…いいパトロンがいます・3マス進む
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